香港国際空港に集まったデモ隊と警官(2019年8月13日、写真:The New York Times/Redux/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 アジアのハブ空港である香港国際空港がえらいことになっている。8月5日に行われたゼネストで200便が運休になったのに続き、8月12日、13日と空港内で行われた数千人規模のデモを理由に、空港側は断続的に全便欠航に踏み切った。2日合わせて600便前後が欠航となった。13日深夜には数十人の警官隊が空港構内に突入。空港構内でペッパースプレーや警棒を使い、デモ隊と激しく衝突した。

 デモ側も香港政府側も、香港のハブ空港機能をマヒさせ、国際社会を巻き込むことで、双方の暴力性と不条理を訴えようと目論んでいる。だが、ここにきて中国がこれまでの姿勢から一転、香港デモを「テロ」扱いし、武力鎮圧をちらつかせながら干渉の意志を見せ始めてきた。

 6月9日に100万人デモを成功させ、米国民主党議員のナンシー・ペロシに「美しいデモ」と言わしめた香港の整然とした「反送中デモ」は、2カ月の間、警察の暴力に対抗する形で、ゼネラルストライキや交通機関の妨害、警察施設の襲撃といった“暴力性”を増し続けている。そのことが、中国に人民解放軍・武装警察出動という大暴力行使の口実を与えることになるかもしれないと、国際社会も固唾を飲んで見守っている。

女性「失明」で殺気立つデモ参加者

 当初、香港国際空港内のデモは、各国言語でデモ隊の主張を掲げて座り込む比較的穏当なものだった。空港では8月9日から「万人接機(みんなで飛行機を迎えよう)」集会が呼びかけられ、デモ集会の許可を得ないまま数千人が空港構内で座り込みを行っていた。

「万人接機」集会は3日間のはずだったが、11日に尖沙咀で行われたデモで、女性が至近距離でビーンバック弾を顔に撃たれ右目が失明する重傷を負ったことから市民の怒りが拡大。12日以降も空港内デモが継続された。12日のデモは、右目に包帯を当て、失明した女性を象徴する姿のデモ参加者もあり、殺気だってきた。

 空港側は、搭乗手続きに支障が起きていると判断し、午後から離発着便の取り消しを行い、およそ150便が離発着を取りやめた。香港警察の特殊装甲車両が空港に向かったという情報もあり、一時緊張が走った。