(福島 香織:ジャーナリスト)
今週、人民元が1ドル=7元のラインを突破した。米国東部時間で8月5日、月曜午前、1ドル=7.05元に急落。これは2008年5月以来の水準で、世界は米中貿易戦争が米中金融戦争に突入したと認識した。
中国語で「破七、守七」と呼ばれる1ドル7元ラインは、一種の心理ラインとされ、これを超えると、中国政府としても制御できない勢いで人民元暴落が起きかねないと言われていた。中国側は昨年(2018年)、元暴落を防ごうと外貨準備をかなり投入して元を買い支えていたことを明らかにしている。中国経済の実態からいえば、人民元はむしろ介入によってこれまで高く誘導されてきたというのが事実なのだろう。
米国側は、中国が為替介入によって元を切り下げることを警戒していた。そして、この元暴落を受けて、トランプ政権は5日、中国を25年ぶりに“中国は意図的に元を切り下げている”として為替操作国認定したのである。これがどういう意味を持つのか、今後何が起きるのか、少し考えてみたい。
「破七」は自信の表れか?
中国政府はこれまで「破七」を非常に恐れており、このラインを突破させないよう必死だった。だが、8月5日、人民銀行(中央銀行)は人民元取引の目安となる基準値を6.9225に設定した。これは5月16日以来の大幅な引き下げだ。
7月末の第12回目の米中通商協議で米政府が3000億ドル分の中国製品に10%の追加輸入関税を発表し、さらにFBRが利下げに転じたことを受けて、中国も七ラインを守る(守七)努力を諦めたのかもしれない。あるいは中国経済の疲労度が「守七」を維持できなくなったのか。