ところがこの『トラ・トラ・トラ!』は、戦争映画としては希有で例外的な作品である。奇襲攻撃する側の日本海軍を日本サイドで、不意打ちを食らった米国海軍を米国サイドで別個に製作し、映画として最終的に合体しているからだ。監督も俳優たちも、それぞれ日本サイドと米国サイドでは別個であり、日本人の登場人物は最初から日本語でしゃべり、米国人の登場人物は最初から英語でしゃべっている。日本人俳優たちの立ち居振る舞いは自然であり、日本人から見て違和感がまったくないのだ。米国版のタイトルは、『Tora! Tora! Tora!』である。予告編で確かめてみるといいだろう。

『アニメンタリー 決断』もまた、日本サイドの指揮官と敵国の指揮官の双方の立場から描いている点が共通している。本編の全25話のうち、大半は米軍との太平洋における海戦である。ただし、植民地支配をしていた英国とオランダとの南洋(現在の東南アジア)での戦争を取り上げている。

『アニメンタリー 決断』の第1話は「真珠湾奇襲」にあてられている。『アニメンタリー 決断』では、戦争に至った経緯や背後関係については触れられず、あくまでも実際の戦争と、戦争における現場指揮官の決断が描かれる。戦場において勝敗を決するのは、あくまでもいかに正確な情報を収集し、タイミングを誤らずに正しい決断を下すことができるかという観点からである。この第1話は、タツノコプロのTatsunokoChannelでYouTubeにアップされている。無料で視聴できるので、ぜひ『トラ・トラ・トラ!』と比較してみることをお薦めしたい。

 比較してみると、『トラ・トラ・トラ!』と『アニメンタリー 決断』に共通するものがあることが理解されるだろう。それは、日本側の将兵だけでなく、対戦国の将兵も脇役以上の存在として登場させていることだ。

 軍事作戦というものは、相手側がどう考えて、どう出てくるか、イマジネーションを十分に働かせ、事前に考え尽くした上で決まってくるわけだが、あくまでも交戦国側のリアルタイムの状況は、偵察や暗号解読情報などをもとにしても最終的に推論するしかない。この点は双方ともに置かれた状況はおなじである。だが、映画やアニメでは、俯瞰的に双方の立場を知った上で比較することができるのである。そして、なにが違いとなって勝敗が決したのか知ることができる。

「真珠湾奇襲」に関しては、『トラ・トラ・トラ!』という映画によって実写版が製作されているが、それ以外の戦いについては、日米双方の立場を俯瞰的かつ公平に見ることができる作品はほとんどない。だから、そこにこそ、『アニメンタリー 決断』の存在意義があるわけだ。

 1971年当時は、『決断』に限らず、日本の立場からみた「先の大戦」関連の映画やドラマはきわめて多かった。少なくとも関東地方では、東京12チャンネルで米軍による記録映画が、えんえんと何年にもわたって放送されていた。つまり日米双方から見る視点が提供されており、おのずから複眼的なものの見方が形成されやすい状況があったということだ。

日本軍の真珠湾攻撃を受けて炎上する戦艦アリゾナ(出所:Wikipedia

個々の「戦闘」に目を向けよ

『アニメンタリー 決断』の本篇25話のタイトルを紹介しておこう。

 まずは、「太平洋戦争」で戦史に残る日米両海軍による戦いが3回続く。「第1話 真珠湾奇襲」「第2話 ミッドウェイ海戦(前編)」「第3話 ミッドウェイ海戦(後編)」である。

 次に、大英帝国の植民地であった英領マラヤとシンガポール、そして香港の攻略作戦が取り上げられる。「第4話 マレー突進作戦」と「第5話 シンガポール攻略」は連続した作戦で、海軍の支援を受けて陸軍部隊がマレー半島に上陸、一気に南下してシンガポールを陥落させた作戦だ。時間的にはマレー作戦のほうが真珠湾攻撃よりも先行していたことは、あまり知られていない。第6話は「香港攻略」である。日本が4年間にわたって香港を占領していたこと自体、知らない人がいるかもしれない。