アメリカ人ビジネスエリートの働き方は、ロジカルでスマートで最先端──。日本でよく聞く“定説”だが、それは彼らの働き方のほんの一面に過ぎない。アメリカの職場は、実は日本に負けず劣らず泥臭さと人間臭さに満ちている。アメリカで約3年間、現地のビジネスエリートと共に働き、現在は「GAFA」の1社で働く日本人マーケターRio氏が、アメリカ人の働き方の知られざる実態を紹介する。(その1/全3回、JBpress)

上司にテニスで勝ってはいけない

 先日、とあるアメリカのドラマを見ていました。

 ドラマの中で、主人公のアメリカ人サラリーマンが上司とテニスをするシーンがありました。主人公は本当はテニスがプロ並みに得意なのですが、上司に花を持たせるべく勝負所であえてミスをして負けてしまいました。

 あまりにもあからさまで笑ってしまったのですが、アメリカのオフィスで同じようなことが起きていたことを思い出しました。

 筆者は渡米前、このように上司の機嫌を取る“ゴマすり文化”は日本特有のビジネス文化だと思っていました。しかし、アメリカで仕事をしてみると、日本と同じか、それ以上に強烈で徹底的なゴマすり文化を体験することができました。

 今回はその一部を紹介したいと思います。

毎朝聞こえる "I like your shirts !"

 私が働いていたアメリカの会社は、毎朝、同僚との "Good morning ! How are you doing ? "(おはよう、調子はどう?) といったドラマや映画でよく聞く挨拶から始まります。

 興味深かったのは、アメリカ人の同僚全員が自分の席に着く前にコーヒーを片手に役員のオフィスの前に並んでいたことです。上司に朝の挨拶をするためでした。そこまでならアメリカのフランクでオープンな文化の一端なのだろうと納得してあまり驚かないのですが、全員が先ほどの定型文に加えて、上司の外見や持ち物に一言コメントしていきます。新しい靴を履いてきたら "I like your shoes." 散髪してきたら”I like your haircut." といった具合です。