コワーキングスペースが「コワーキング」を促す仕組みとは。

 新たな「働く場所」として、近年増えているコワーキングスペース。これまでも、レンタルオフィスのように、所属する組織などにかかわらず仕事ができる場所は存在していた。しかし、コワーキングスペースはそれらと明確な違いがあるという。

「コワーキングスペースの最大の特徴は、人と人とのつながりを生む“機能”や“サービス”が設けられていることです。加えて、ただつながるだけでなく、それが具体的なシナジーにまで発展するための環境が整えられているといえるでしょう」

 そう話すのは、國學院大學経済学部の山本健太准教授。同氏は、コワーキングスペースの機能やサービスを分析することで、この新しい空間の“あるべき姿”や意義が見えるという。山本氏の研究結果とともに紹介していく。

【前回の記事】「働く場所は、組織よりも『街』で選ぶ時代へ」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56624

國學院大學経済学部准教授の山本健太氏。博士(理学)。東北大学大学院理学研究科博士課程修了。九州国際大学特任助教、同助教、同准教授を経て現職。地理学の視点から日本の経済・地域経済の振興を研究する。「ひたすら歩き、話を聞くことで地域の経済が見えてくる」を信条に、フィールドワークを中心とした実証主義に基づく研究を続ける気鋭の地域経済専門家。

レンタルオフィスとの違いは、つながる機能があること

――今回は、コワーキングスペースの機能面をピックアップしていきたいと思います。

山本健太氏(以下、敬称略)初回の記事で述べましたが、コワーキングスペースの価値は、「人と人をつなげる空間」になり得ることです。実際、店舗の機能面を分析すると、そのためのサービスや仕掛けを用意しているケースが目立ちます。

 今回、東京都内のコワーキングスペースにアンケートを行い、各施設が持つ機能やサービスを調べました。すると、「交流会の主催(58.5%)」や「セミナーの主催(56.1%)」など、つながりのきっかけとなるイベントを行っている施設が半数を超えました。

 また、コワーキングスペースが一足先に発達した欧米では、利用者と利用者の間を取り持ったり、話を聞きながら人をつなげたりするホストやファシリテーターが存在するところが数多くあります。日本の施設でも、このような役割の人材を配置している施設が増えています。