女性が敬遠されていた理由は、このような会社にとって都合の良い働かせ方ができないから、という理由による。男女雇用機会均等法ができて女性差別が表面上は禁止されて以降は、補助的な業務に限定して低い給料で雇う一般職ができた。かつて短大卒の女性が好まれた理由が、結婚や出産による退職までの期間が四年制の大学卒より二年長い、というから呆れてしまう。

終身雇用が終わった背景

 独立・起業をしている筆者からすると、このような状況は異常に見えるが、「社員は人生を会社に捧げて当然」という発想は日本企業で長らく常識だった。

 先日、「終身雇用は今後維持できない」と経団連会長やトヨタ自動車の社長がコメントしたことが報じられ強い反発があった。終身雇用は簡単に説明すれば新卒で入社した会社に定年まで勤めることを意味する。反発があったということは終身雇用をまだ多くの人が望んでいるのだろう。

 終身雇用の実態は、景気が長期間にわたって拡大していた時代に、ごく一部の企業で、そして男性だけに生まれた偶然の産物でしかないが、確かにクビにされず安心して働けることは大きなメリットと言える。一方で付随するデメリット・負の側面として、解雇の代わりに行われる長時間労働、突然の転勤、女性の排除といった深刻な問題が発生する。

 しかし現在では、長時間労働は良くない、女性が(男性も)子どもを産み育てながら働くのは当たり前、そして突然転勤なんて命令をされたらさっさと辞めますという働く側の意識変化と、これら雇用調整の手段が企業側にとって極めて使いにくくなっている。たとえ大企業であっても、人生を捧げるに値しないほど不安定な存在であることは多くの人がすでに知っている。

 終身雇用のオワリについては、入社した時点の事業が何十年も続かない、経済環境の変化が昔よりも早くなっている、だからトヨタのような大企業でも終身雇用は続けられない・・・と報じられている。間違いではないが、終身雇用の裏側にあるデメリットを受け入れたくない人が多数派になってきたことも、強い影響を与えている。これはカネカ騒動で社員側に共感した人がこれだけ多数にのぼっていることからも明白だ。

 現在は男性の育休義務化の話も出ているが、これが法律で定められれば終身雇用の維持は経営側からすれば「絶望的」と考えても無理はない。

 終身雇用のメリットと、長時間労働・転勤・女性排除のデメリットは表裏一体だ。なぜなら経済も企業経営もリスクを除外することはかなわず、どこかでリスクを吸収する必要があるからだ。景気や業績が良くなったり悪くなったりを完璧にコントロールすることはできない。そのリスクを引き受けるのが価格変動でリスクを引き受けるマーケット、市場だ。株式、為替、債券、商品、そして人材(労働)と、いずれも市場による取引がリスクを吸収させる。

 景気悪化や業績悪化のリスクを、解雇無しで乗り切るのか、解雇で乗り切るのか(労働市場で解消するか)。解雇が嫌ならば長時間労働や転勤を受け入れる必要があり、解雇を甘受するのであれば長時間労働や転勤はなくても会社は成り立つ。つまり「終身雇用が良いか悪いか?」という話は「雇用リスクをどのような形で受けとめるか?」とイコールだ。