「BtoBからBtoCへのシフト」は、モノの世界だけではありません。地域経済に大きな効果をもたらす観光の分野でも進んでいます。かつて旅行といえば団体旅行やパックツアーが主流でしたが、今では消費者それぞれがネットでホテルやレストランを予約し、自分で旅行のプランを作るという楽しみ方が一般化しています。観光面でも、その変化を上手くとらえられている地域と、そうでない地域に二極化しているのです。かつて企業の慰安旅行などで栄えた熱海は、団体旅行の冷え込みで一時は「衰退」が危惧される状況でしたが、近年は個人客に向けたプロモーションや新規施設の登場で、活況を取り戻しました。やはり、自治体も「BtoC」の流れをしっかり捕まえなければならない時代になっているのです。
似た者同士の姉妹都市はシナジーを生まない
共通項の3つ目は海外です。国内マーケットだけみていても縮んでいくだけなので、海外とどうつながっていくかが鍵となります。北海道のニセコに良質のパウダースノーを求めて海外からスキー客が押し寄せるように、海外からどのように人を呼び込むか、海外のマーケットにどう物販をしていくか、という点で工夫している地方は成功しています。
海外のマーケットと結びつこうとする場合、姉妹都市という関係は一つの武器となります。ただし、この場合、似た者同士の都市同士ではあまり意味がありません。例えば佐賀の有田町とドイツのマイセン市とは、同じ陶器の街ということで姉妹都市になっていますが、友好という面では大きな意味があっても、同じ特徴を持つ者同士ですから、相手方をマーケットと捉えることは難しくなります。シナジー効果を期待するならば、日本国内のきらりと光る特徴を持つ自治体が、大きなマーケットを持っている海外の都市と組むのがベストです。
先述の沼田市は人口5万人弱ですが、私のアレンジで、6月4日に中国四川省江油市という人口90万人弱の都市の共産党書記が来訪した際に、経済、観光、農業などの分野で協力を深める覚書に調印しました。
海外の人々も、「東京」「大阪」「京都」にはそろそろ飽きてきた、という層もいます。そういうところに、大都市にはない特徴を備えた地方都市がアピールすれば、大きなチャンスを掴むことが出来るのです。
これら成功した地方が実施している「共通項」を、それぞれの地方が実践していけば、大きな成果が見込めます。ただし、それには「人材」が必要です。その地方を変革していけるリーダーです。実はここが地方の大きな問題なのです。
「東京一極集中」と言われてきましたが、最も東京に集中したのが、有能な人材でした。地域のトップ高校の卒業生は東京や大阪、名古屋といった大都市に出ていってしまい、地元に帰ってくる割合はごくわずか、というのが日本全国の地方で長年続いていた現象でした。変革者に求められる資質は、学業優秀者の資質と必ずしも一致するわけではないのですが、地方における人材の層の薄さは否定できない事実です。
そうした中で地方が「俺たちはこれで食っていく」というシンボルを打ち立てるためには、「俺が変革してやる」という気概を持った人材の育成が必要です。いま地方にいる人材がそういった心構えを改めて持つのもいい。いまは都会にいるけれど、故郷のためにこれからは力を尽くそうと決意を固めるのもいい。いずれにしても、それぞれの地域が「中央から独立しても食っていけるようになるんだ」というくらいの気概を持つことが大事になると思うのです。
明治維新は、廃藩置県で国中を一致団結させることで大きな成果を挙げることができました。これからはそれとは逆に、各地方が独立心を持って自立していく「逆維新」が必要になってきます。そうした考えを持つ人が増えていけば、日本の地方創生も大きく進むことになると思うのです。