特にこの問題を浮き彫りにしたのが、2014年に発表された通称「増田レポート」です。このレポートでは、2040年時点で、20~39歳の女性人口が半減してしまう都市を「消滅可能性都市」と定義しているのですが、それに従えば、全自治体の半分ほどが消滅可能性都市となることが明らかにされています。その中には・東京の豊島区も含まれ、都会までもが「消滅」の危機に直面する時代になってきていることで社会に大きな衝撃を与えました。
放っておいたら、地方は消滅してしまいます。消滅しないために大事なことは、「何で食っていくか」を明確にすることなのです。
トルストイの作品『アンナ・カレーニナ』の冒頭にこんな一説があります。
<幸せな家族はどれもみな同じように見えるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある>(望月哲男訳)
地方創生にこれと真逆のことが言えます。
不幸な自治体はどれもみな同じように見えるが、幸せな自治体にはそれぞれの幸せの形がある、のです。
不幸な自治体に共通しているのは、「若者が都会に流出して高齢化が進み、人口が減少してしまった。そのために商店街が寂れてしまった」というものです。逆に、上手くいっている自治体は、各地ごとにその特徴が違っています。
上手くいっている地方には明確なシンボルが
私は現在、8つの自治体でアドバイザーをしています。最初にアドバイザーになった那須塩原市では、市長室に顔を出すと、お茶ではなく牛乳が出てきます。那須塩原は、生乳の産出額が本州一です。牛乳の消費量が落ちてはいますが、酪農家たちは消費量が伸びているチーズ作りに取り組んだり、そのチーズを使用したチーズケーキがヒットしたりという、強力な武器である「生乳」を起点とした産業づくりに取り組んでいます。
次にアドバイザーになった新潟県の三条市には400年の鍛冶技術の伝統が根付いています。包丁などでも有名ですが、伊勢神宮の和釘も三条で作られたものです。その鍛造技術を使って自動車メーカーの下請けなども発達してきましたが、最近ではアウトドア用品のスノーピークという企業も有名です。この企業も、地元の鍛冶技術を生かしたタフな製品づくりでユーザーの信頼を得ている企業です。
その他にアドバイザーを務めさせてもらっている自治体を挙げると、もともと中小企業などが多くモノづくりが得意な川崎市、リンゴやサクランボなどのフルーツ、こんにゃくいもの生産量で国内屈指の沼田市(群馬)、茶筅をはじめ竹細工が盛んな生駒市(奈良)、スキー、温泉という良質なリゾート資源を持つ妙高市(新潟)、同じくリゾート地として揺るがぬ人気を誇る軽井沢町(長野)、日光街道沿いの歴史や文化、スポーツ、医療、都市農業など地域資源が豊かな越谷市(埼玉)、ということになります。いずれも、他の地域と比べて特筆すべき産業、特産品、観光資源などを抱えています。