これに対して、EU懐疑勢力は、イギリスの保守党などから成る「欧州保守改革(ECR)」が75議席から59議席に減らし、急進左派が参加する「欧州統一左派・北方緑の左派同盟(GUE/NGL)」も52議席から38議席に後退した。しかし、イギリスのEU離脱党、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」、イタリアの「五つ星運動」などから構成される「自由と直接民主主義のヨーロッパ(EFDD)」は41議席から54議席と伸び、フランスの国民連合(RN)やイタリアの同盟のような極右政党が構成する「国家と自由の欧州(ENF)」は37議席から58議席に躍進している。その他が30議席である。その結果、EU懐疑派は243議席となり、議席の3割は超えたものの、3分の1の250議席には届かなかった。

国政への不満表明の場となった欧州議会選挙

 私の欧州での経験を振り返っても、欧州議会選挙には普通の人はほとんど関心が無く、近年は投票率も、49.51%(1999年)、45.47%(2004年)、43.0%(2009年)、42.61%(2914年)と低下の一途を辿ってきた。

 しかし、今回は事情が異なった。投票率は50.94%と上昇したのである。これは、今回の欧州議会選挙が、それぞれの国政のバロメーターとして大きな意味を持つ選挙と捉えられ、各国有権者が国政に対する不満を表明する機会になったからである。

欧州議会選、中道会派が後退 EU懐疑派が大幅増 議席見通し

欧州議会選でデンマーク・コペンハーゲンの投票所を訪れる人々(2019年5月26日撮影)。(c) Mads Claus Rasmussen / Ritzau Scanpix / AFP〔AFPBB News

 まず世界に衝撃を与えたのは極右の躍進である。移民排斥を謳うこのグループ、フランスではルペン党首の率いる極右の国民連合が23%の得票で、マクロン与党のEFMの22%を抑えてトップになった。

 フランスでは、毎週末に行われる反政府デモが半年経った今も続いており、マクロン政権への国民の信頼は失墜している。2017年の大統領就任時には62%あった支持率も、今や32%と半減している。今回、ルペン党首の率いる極右の国民連合がREMに勝った背景は、格差の拡大に対するマクロン大統領の無策への有権者の反発である。

 イタリアでも、極右の同盟が34%の得票で中道左派の民主党を大きく引き離した。また、ハンガリーでもオルバン首相のポピュリスト右翼「フィデス・ハンガリー市民連盟」が52%と圧勝した。

 ドイツでは、CDU/CSUとSPDが大連立を組んでいるが、前者は1位を維持したものの得票率は28.9%と6.4%減、後者は11.5%減の15.8%で3位に転落した。2位は緑の党で、AfDが4位に躍進している。

 問題は、ドイツ現存最古の政党で、CDUとともに国民政党として中心的役割を果たしてきたSPDの凋落ぶりだ。このまま退潮傾向が続くと、党内で大連立離脱への圧力が強まることが予想される。