図2は育成者側の世代と比較したグラフです。「強制・不条理」や「叱られる」の経験はだいぶ少ないことが見てとれます。こうした経験の差は、理不尽なダメ出しなど苦手なことへの耐性の差に表れてくると思います。

図2:経験の変化。(RMSネット調査2015より)
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 また「理想の職場」に対する考え方も違いが出てきます。図3は過去調査(2009年)と2018年の比較です。「鍛え合う」よりも「助け合う」ことが大事で、「1つの決められたことに従う」よりも「お互いの考えや価値観を尊重する」ことが理想という割合がかなり増えていることが分かります。

図3:理想の職場・上司像。(RMS新人社員意識調査過去10年比較より)
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 このように、育った環境の中で形成されてきた若者ならではの価値観を上司世代は「学ぶ」という姿勢を持つと、さらに見方が変わってくると思います。

若者の価値観は「VUCA時代」に合っている?

――「理解」から、「学ぶ」という視点にまで引き上げるのはどうしてでしょう?

桑原 現代という時代によって培われた若者の価値観は、正解がなく不確実な現代のビジネス環境、いわゆる「VUCA(ブーカ)」の時代に非常に合ったものだからです。

 VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」という4つのキーワードの頭文字をとった、現代のビジネス環境を表すものとして使われている言葉です。

 実は、私もかつては若者の価値観や行動に対して「違和感」を抱いていた上司世代の1人です。しかし、15年以上若者の育成に携わる中で、これからのVUCA的な時代には、若者の価値観のほうがフィットするのではないかと思うようになりました。

――そうだったのですね。では、そのきかっけをお話いただくとともに、若者から学ぶ理由やその際のポイントについて、さらに教えていただきたいと思います。

後編に続く