田原 ところでね、いまテレビの世界の人はみな、危機感を持っているでしょう。若い人のテレビ離れが進んでいるというのが一番の理由だけど、それに伴って制作費も減っている。大島さんの実感としてはどう?

大島 やっぱり下がっていますね。

田原 理由は何だろう?

大島 もちろん一番の理由は、広告費というパイがネットに多く配分されるようになったということでしょう。民放に投下される広告費が減ってきている。それが制作費の締め付けの最大の理由です。

田原 NHKの番組はどう?

大島 NHKは下がっていないと思います。

 ただ『NHKスペシャル』のような局内で作っている番組は、見ていて「相当お金をかけているな」と感じますが、われわれのような制作会社にはそういう番組のお鉢はなかなか回ってこないですね。

 一方の、民放の場合は、全体の制作費は下がっているのは確かですが、やっぱり視聴率いかんでかけられるお金の額も決まってきます。それは逆に分かりやすい構図だと思いますね。

最低限の「生存視聴率」も低下傾向に

田原 大島さんも関わっている『情熱大陸』は、視聴率はだいたいどのぐらい?

大島 以前に比べれば少し下がってきていますが、だいたい5~6%ですね。いいときは8%くらいあります。また大阪ではもうちょっとよくて、時々2ケタいくようです。

田原 やっぱり視聴率を取るのも以前に比べて難しくなってきた?

大島 そうですね。ただ、僕は、視聴率10%以上を求められる番組をやると、自分の作品じゃなくなっちゃう感覚があるんです。せいぜい頑張って5~6%ぐらいがちょうどいいなと。

 もっと言えば、NHKのEテレやBSで、視聴率は1%とか2%くらいの番組が、作っていて一番楽しい。

 マスに届けるために視聴率を求めることを完全に放棄するつもりはありませんが、自分には、数字を取るために煽って見せる今の番組作りのお作法っていうのは、なかなか合わないなと。甘いと言われればそれまでかもしれませんが、せっかく独立したんだから、自分に合った道を進んでいきたいと思うんです。

田原 昔、TBSで23時からの報道番組をやっていた筑紫哲也さんこんな話をしたんです。いくらいい番組を作っても、視聴率が取れなきゃ番組自体が潰れてしまう。

大島 その通りです。

田原 で、2人の意見が一致したのは、番組が存続するための「生存視聴率」として7%は必要だということ。ただし、10パーセント以上を狙っちゃうと、自分が思うのと違う番組を作らなきゃいけない。だから俺たちは、7%と10%の間で勝負しようと。大島さんはどう思いますか?

大島 全く同感ですが、ただ今はテレビ視聴率全体が下がってきているので、生存視聴率ももう少し下がっているんじゃないかと感じますね。

田原 そうだね。6%取れればいいかもね。

大島 はい。場合によっては5%でもいいかもしれない。それくらいテレビの視聴率は低下してきているということです。

 もちろん、数字も取って中身もいい番組もまれにですがありますので、頭でっかちになって数字を否定するつもりもないんですけどね(笑)。

後編に続く)