「『朝生』ほどの番組でも制作費の制限は厳しいんですね」(大川)。 「もちろん。だから面白いのをやるんです。『5時に夢中!』も制作費が安いから面白いんですよ」(田原)

 ともに生放送の舞台で活躍してきた田原総一朗氏と大川貴史氏(TOKYO MX 制作局長)。撮り直しの利かない一発勝負の緊張感が魅力だが、「低予算」という条件のため、コストを抑えられる生放送にせざるを得なかったという面もある。それでも刺激的な番組を作るために、現場ではどのような工夫がなされているのか。前回前々回に引き続き、その一端を披露してもらった。(構成:阿部 崇、撮影:NOJYO<高木俊幸写真事務所>)

生番組ほど面白いテレビはない

田原総一朗氏(以下、田原) 僕も大川さんも、いまテレビでやっているのは生放送がメインですよね。

 僕は活字の仕事もしているけれど、活字とテレビの一番の違いは、活字は文字・言葉でしょう。テレビはしゃべりね。両方やってみると、言葉なんて表現のワン・オブ・ゼムということがよく分かる。

大川貴史氏(以下、大川) と言いますと?

田原 つまり、政治家が「はい」と言っても、目は「ノー」っていう場合があるでしょう。これがテレビだと一発で分かる。活字だと、「はい」は「イエス」の意味にしかならない。テレビでは、「はい」って言っていたって、そこにいろんな意味がある。それが見ている人にもすぐ伝わる。

大川 なるほど。

田原 生放送だとそれがより分かりやすいんです。こっちが突っ込んでいったら、相手の矛盾がどんどん露呈する。これは面白いですよ。

大川 そうですよね、確かに。

田原 これが収録の番組だったら、政治家は「失言したな」って思ったら、「あそこはカットしてくれ」「差し替えてくれ」って言いますよ。でも生番組だったら、そんなこと言えない。そういう緊張感がある。

大川 そうですね。

田原 だから、生放送の『5時に夢中!』にもものすごく可能性があると思う。

大川 ありがとうございます。僕らが生放送にこだわっているのは、正直に言うと、そのほうが制作費が安いからということもあるんです。

田原 そう、生は編集する手間もかからないからね。

大川 でも、だからこそリアリティーもあるし迫力も出る。そこが生番組の強みですよね。

田原 僕の『朝まで生テレビ!』は、番組スタート時に、制作に関する3つの条件があったんです。1つ目は、夜中の番組は制作費をかけられない。だから有名タレントは出せないので、文化人しか出さないということ。

大川 確かにそうですね。

田原総一朗:東京12チャンネル(現テレビ東京)を経てジャーナリストに。『朝まで生テレビ』(テレビ朝日)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)などに出演する傍ら、活字媒体での連載も多数。近著に『AIで私の仕事はなくなりますか?』 (講談社+α新書) など。

田原 2つ目はこれもお金に関することだけど、夜中の番組だから、途中で終わっちゃうと出演者全員をハイヤーで家まで送らなきゃならない。

大川 ああ、なるほど。

田原 その経費をかけないために、出演者には終電で来てもらって、始発で帰れるようにする。そういう放送時間に設定していた。

大川 そうか、途中で終わっちゃいけないんだ。

田原 しかも夜中の長時間番組という悪条件だから、視聴者に見てもらうためには刺激がいっぱいなきゃいけない。この3つが条件。

大川 『朝生』ほどの番組でも、やっぱりそういう制作費の制限はあるんですね。

田原 もちろんかけられる制作費は少ないですよ。だから面白いのをやるんです。『5時に夢中!』も制作費が安いから面白いんですよ。

大川 そう。確かにそれはあるかもしれないですね。いい意味で諦めが付くっていうか。変な話、ちょっとデコレーションしたところで、大して面白くならないですからね。