田原 日本人って、いまどういう番組を見たいと思っているんだろう?

大川 本音と建前がある中で、やっぱり本音を聞きたいっていう欲求は絶対あるじゃないですか。だから僕も、ずっとそこを掘ってきたつもりだったんですけど、それもちょっと飽きられてきはじめているのかな、という感覚もあるんですね。じゃあその先、どうなっていくのかというのは、まだ見えていないんですけど。

田原 この間、小泉進次郎と会って話をしていたら、彼は、「いまの日本の一番の問題は、ほとんどの人が政治に関心がないことだ」と言っていました。

 みんな政治に関心がないから、森友問題があろうと、加計問題があろうと、安倍政権には大した影響はないんですよ。みんな政治にもっと関心があるんだったら、内閣がひっくり返るくらいの問題ですよ。

大川 確かにそうですよね。首相夫人の影響が取りざたされたり、首相の友人だから特別な便宜があったんじゃないかと疑われたりするような問題ですからね。

田原 なんでみんな政治に興味がないんだろう。

大川 やっぱり実感がないんじゃないですかね。自分の1票が国を変えてるっていう実感がないから、政治は自分たちとは乖離しているもの、という感覚が強いんじゃないですか。

どれだけ政権与党が強大でもジャーナリズムは戦える

田原 僕が感じている理由の一つは野党が弱過ぎること。もう一つは、やっぱり自民党の議員の多くが世襲だということですよ。総理大臣だって世襲議員ばかりでしょう。そうなったら一般の国民は「俺たちには関係ないや」と思っちゃうよ。

大川 政治家が家業みたいになっている家ってありますからね。

田原 だから、下駄屋の息子が下駄屋になるみたいに政治家になって、総理大臣になるようなことまで起きちゃうんだよね。

大川 身分制度があった江戸時代みたいな感じになっていますよね。

田原 そういう批判を大川さんもMXの番組でやればいいんだよ。安倍だって麻生だって、小泉進次郎だって世襲議員なんだから、そういう議員を出演させて、「なぜあなたは世襲なんだ」とやりゃあいい。だって、こういう議員の存在が日本の政治をつまらなくしているわけだから。

大川 なるほど。

田原 僕はね、権力っていうのは本来は面白いものだと思っているんです。

大川 テレビが扱うものとしても魅力的ですか。

田原 だって権力っていうのは、要するに、勝つか負けるかですよ。勝ったら国を変えられるんだから。そこは織田信長の時代から同じ。要するに、権力は勝つか負けるか。その争いの中で勝ち残った者がこの国を変えていく。これは今も同じですよ。まぁ織田信長は負かした相手のことをずいぶん殺したところが現代とは違うけれど、構造は同じです。

大川 はい。

田原 僕はその様子を観察したり批判したりするのは好きなんだけど、自分自身が中に入って勝つか負けるかっていうのは、あんまり好きじゃない。だから、権力には入っていかないんです。これまで、共産党以外の全ての政党から誘われてきましたけど、「僕は権力は嫌いだ」と言って断ってきた。だからジャーナリストに徹しているんです。

大川 田原さんはジャーナリストとして日本の国を動かしてきたお一人です。ジャーナリズムで本当に国を変えられるっていう部分を、僕らは田原さんに見せてもらってきた。

 ただ、いまの時代、これからもジャーナリズムがこの国を変える力を持ち得るのかな、と思う部分もあるんですよね。

田原 それは大丈夫だよ。

大川 心配しすぎですか?

田原 うん。

大川 じゃ、ジャーナリズムへの期待は持っていていいと。

田原 自慢じゃないけど、僕は総理大臣を3人もクビにしているんだよ。それでもちゃんと生きているからね。そういう力はジャーナリズムにはありますよ。大川さんにもそういう姿勢を期待しますよ。

大川 ありがとうございます。バラエティ番組が多いですが、身が引き締まる思いです。

◎(その1)はこちら
 『5時に夢中!』が見つけた主婦向けお色気路線という金鉱
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54487
 (その2)はこちら
 マツコ・デラックスはなぜ本質を突けるのか
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54511