3.米中貿易戦争における米中の狙い
次に、米中の貿易協議等から読み取れる両国の狙いなどを考察する。
筆者は経済の専門家でないので、見当違いの考察になるかもしれない。大方のご教示を賜りたい。
(1)米国の狙い
中国が不公正貿易慣行の全面的な中止を約束すれば米国の勝利である。
しかし、米国が中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に科した制裁を解除したことから、米国は中国からそのような譲歩を得ることは無理であろうと見ており、何らかの妥協点を模索している様子がうかがえる。
また、今回の制裁関税の発動の時期が米国の中間選挙の直前であったところから、国内に向けに強い指導者としての印象を与える狙いがあったものと考えられる。この狙いの役割は終了した。
11月17日に中国が142項目の行動計画を提出したことにより、来る首脳会議で合意の可能性が出てきた。
しかし、トランプ大統領が「大きな懸案がいくつか残っており、現時点ではまだ受け入れられない」と述べており、現時点では首脳会談で合意に至るかはなお不透明である。
(2)中国の狙い
中国は、WTO紛争解決手続きを申し立てるなどして、WTOを重視するEUや日本を味方に引き入れて、米国を孤立させるようとしている。
しかし、2016年7月の南シナ海仲裁裁判所の裁定を無視し続けているなど国際機関を軽視している中国を信頼・協力する国はないであろう。
また、中国は、これまでの協議で輸入拡大や知的財産保護体制の改善を提示するなど対話による解決を目指している。
しかし、輸入拡大や知的財産保護体制の改善は、米国にとっては最低限の要求事項であって、これで米国が満足するとは思えない。
中国は今のところ米国に報復措置も辞さない強硬姿勢を取っているが、2期目の習近平政権の権力基盤が盤石となり、習総書記は、今後、国内の反対勢力の声などを気にせずに政策決定を行うことができることから、必要であれば譲歩の姿勢を見せる可能性もある。
中国は産業発展の原動力は科学技術力であると見ている。
そして、中国は製造業の高度化を目指す行動計画である「中国製造2025」を実現するために、海外から次世代情報通信技術やハイエンドデジタル工作機械、ロボット、航空・宇宙装備などの「中国製造2025」が定める10大重点分野に関連する技術を必要としている。
従って、今回は、ある程度の譲歩をせざるを得ないであろう。11月17日に142項目の行動計画を提出したことは、それを物語るものである。