米中貿易戦争を勃発させた米ドナルド・トランプ大統領を批判してきたマレーシアのマハティール首相がついに、同大統領に“宣戦布告”した。
「ゴールドマン・サックス(GS)は、マレーシアを欺いてきた。米司法省はGSに、(マレーシアが1MDB関連の資金不正流用で被害を受けた損失補填として)巨額の手数料を返還させると約束した」
「GSが不正を働いた証拠はある。ゴールドマンであろうがなかろうが、違法行為は法の支配の下、裁かれるべきだ」
マハティール首相はこう述べ、マレーシア政府系投資会社「1MDB」の資金不正流用、洗浄(マネーロンダリング)事件で、組織的に関与した疑惑が濃厚になってきた世界最大級の米投資会社のゴールドマンを糾弾。
米政府に対して、同社に厳しく対処し、コンプライアンス違反などで制裁金だけでなく、業務停止などを視野に入れた厳罰を強く迫っている。
マハティール首相は「米政府の対応を見守る」とする一方、米政府の対応に関係なく、マレーシア国内で同社への刑事告発の訴訟を起こすことも想定しているとみられる。
マハティール首相が強硬な姿勢を崩さないのは、前首相のナジブ氏を糾弾するためばかりではない。
後で詳しく述べるが、1MDB事件は実は、ユダヤ系金融機関によるイスラム諸国からの財産奪取という側面があるからである。そして米国にとっても海外における資金洗浄に厳格なメスを入れたい意図もある。
事件の最近の動きをおさらいしておこう。
米司法省は11月初旬、1MDBの資金不正流用でゴールドマンの元東南アジア統括責任者などの元幹部ら2人を「外国公務員への贈賄を禁止する海外不正腐敗行為防止法違反」の罪などで起訴した。