同社が組織ぐるみでこの事件に関与し、最高幹部など経営陣の指示が働いていた可能性が高くなっている。

 米政府筋によると、「現在取締役会長で当時、CEO(最高経営責任者)だった(ウォール街の超大物バンカーの)ロイド・ブランクファイン氏ら経営陣が、ニューヨークのフォーシーズンホテルで数回、ナジブ前首相と不正事件の主犯格の華人ブローカーのジョー・ロー被告(米司法省が同社幹部とともに起訴)同伴で会合を持った」と見られている。

 ゴールドマンは、1MDBの債券発行を引き受け、約65億ドル(約7300億円)の資金を調達し、約6億ドル(約680億円)の報酬手数料を受け取ってきた。

 ゴールドマンが要求した手数料は、相場の6倍以上の高値で、「1MDB関連の報酬は、当時の同社投資部門の最高額の案件だった」(米金融関係者)ことからも、経営陣の指示があったことは明らかだ。

 ほんの1か月前に経営体制を一新したゴールドマン。新しくCEOに就任したデイビッド・ソロモン氏は今回の不祥事に対し、米メディアに「極めて惨めで悲惨なこと」で、「違法行為に相当する」と新たな船出の出鼻を挫かれ、落胆の表情を隠しきれない。

 米政府筋によると、「ソロモン氏の関与は現在の時点で、明らかになっていない」とするものの、米の著名金融専門家は次のように警鐘を鳴らす。

 「事件の実態が明らかにされないことが、不測の事態も想定され、ゴールドマンにとって最大の脅威となるだろう」

 今回の資金不正流用の担当部署、投資銀行部門が1MDBの案件を進めていた当時、同部門トップで統括していたのが、現CEOのソロモン氏だった。

 今後の捜査の行方によっては、ゴールドマンの経営中枢にも大きな影響が及ぼされるリスクもある。

 「1MDB」はナジブ前政権が設立。都市開発などを目的に血税が投入されたが、巨額の債務を抱えるとともに、総額45億ドル以上の資金が“消え”、不正流用の疑惑が明らかになった。

(参照:連載「消えた23億ドル~マレーシア政府系投資会社の巨額不正疑惑(上中下)」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43250http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43277http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43331