空前絶後の汚職疑惑で激震が走っているマレーシア。日本では報道されていないが、その“余震”は、日本を含め他のアジア諸国に止まらず、中東、欧米諸国、さらにはケイマン諸島まで巻き込む様相に発展している。

 震源は、ナジブ・ラザク首相の肝いりで2009年に設立されたマレーシア政府100%出資の国有投資会社「1マレーシア・デベロップメント(1MDB)」。

 1MDBは、外国直接投資誘致を加速化し、持続した経済成長を図るという首相の野心的な目的の下に設立。

 首都クアラルンプールを「イスラム金融のロンドン」にと、100社に上る外資企業を誘致し、50万人以上の雇用とイスラム金融のハブとなることを目指す国際金融地区「トゥン・ラザク・エクスチェンジ(TX)」建設(2018年竣工予定)を手掛けるなど、政府の最優先事業のエンジン役を務めてきた。

 日本からは、国際協力銀行(JBIC)がJBIC保証付きの1MDB発行サムライ債に関する覚書を締結したほか、三井物産が2018年の商用運転開始を目指し、1MDBと共同で世界最大級の石炭火力発電所の建設に乗り出すなど、マレーシア政府の「全面的な信用保証」をバックに積極的なアプローチを仕掛けてきた。

巨額の負債を抱える政府系投資会社、市場にも波紋

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マレーシア航空MH370便失踪事件で記者会見する同国のナジブ・ラザク首相〔AFPBB News

 政治的影響力を武器に海外投資を引きつけてきた1MDBだが、設立から6年足らずで420億リンギ(約1兆4000億円)にも上る巨額の借金を抱えていることが発覚。

 所有資産は、520億リンギ(約1兆7200億円)と公表するが、その大部分が不動産。キャッシュフロー収益がほとんどなく、これまで国内の主要銀行や海外の投資ファンド、投資家などから融資を受ける形で原資を肥やしてきた。

 その原資を基に、経済成長を下支えする電力確保は、カジノや発電事業などを展開するマレーシア有数のコングロマリット、ゲンティン・グループなどから15基の発電所を市場価格をはるかに超える価格で買収。

 投資家の信頼を得るという名目だったが、買収するたびに負債も雪だるま式に増えるという負のスパイラルに陥り、綱渡り経営で苦戦を強いられてきた。

 借金も「420億リンギは2014年3月時点の話。実際は500億リンギ(約1兆6500億円)以上に達しているようだ」(欧米投資家)と指摘される。