1MDB不正は、社債などを通じ調達した資金を実態のない複数のペーパーカンパニーなどにまず支払い、複雑な資金経路を“迂回”した後、マネーロンダリングされ、関係者の口座に送り込まれるという極めて玄人的な手法で実行されてきた。
こうした中、今回、米国がゴールドマンを訴追した背景には、マレーシアの政権交代がある。
ナジブ前首相が失脚、マハティール首相の再登板で、前政権関与の刑事追及が進められ、米司法省との捜査連携で実態の解明がなされたことが大きい。
5月の政権交代直後から、「マハティール首相主導のもと、米司法省にゴールドマンサックスへの補填保障と、刑事追及を要請していた」(マレーシア政府筋)という。
さらに、米国では7日に更迭されたジェフ・セッションズ司法長官が、「(1MDB事件は)米国史上最大の泥棒政冶(盗賊政冶)による横領事件」で、「不正流用された資金をマネーロンダリングするため企てられた国際的な陰謀」と厳しく糾弾。
さらに「米国が汚職や資金洗浄の場になることは許されない」と再三語っている。
2008年の世界金融危機を教訓に、米国が国際的資金洗浄の“楽園”になることを阻止したい米政府は、マレーシアの1MDB事件を追及することで、資金洗浄への確固たる姿勢を内外に示したい狙いがある。
一方、日本では、金融当局が民間の銀行を監督する立場だが、米国では、民間銀行が連銀や財務省を動かしていると言っていい。
19世紀末の財政破綻の際、ニューヨークのJPモルガンなど大銀行家が米政府に資金投入、救済して以来、米財務省が銀行家の意に反した政策を行わないのが流儀だという。
このため、米国の経済政策立案の黒幕は、JPモルガン(第2次世界大戦前)、ロックフェラー(戦後)、そして、冷戦後はゴールドマンサックスが担ってきたとさえ言われる。