2.通商協議等の経緯

 今月17日までの公開情報に基づき、協議と関連する事象を含めて、次のとおり時系列順にまとめた。

① 2018年5月3-4日:米国のムニューシン財務長官、ウィルバー・ロス商務長官、ラリー・クドロー国家経済会議委員長、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表、ピーター・ナヴァロ通商製造業政策局(OTMP)局長らと中国の劉鶴国務院副総理が率いる中国代表団が2日間にわたって第1回の閣僚級通商協議を実施したが突破口は見つからなかった。

 この協議で注目されたのは米中の間の議論でなく、米政権内部の保護貿易主義者(ロス長官とナヴァロ局長)と自由貿易主義者(ムニューシン長官とクドロー委員長)との間の意見の調整であった。(CNN 5月8日)

② 2018年5月17-18日:ワシントンで開いた第2回閣僚級通商協議を受けた共同声明で「米国の対中貿易赤字を減らすため、中国が米国のモノとサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した」と表明。

 ムニューシン米財務長官は20日に「貿易戦争を当面保留する」と述べ、中国への制裁関税をひとまず棚上げして協議を継続する考えを示した。

 また、中国による知的財産の侵害についても、両国が連携を強化し、中国が法整備を進めるとの表現にとどまった。(日経5月21日及びCNN5月20日)

③ 2018年6月3日:ロス米商務長官と中国の経済担当副首相劉鶴氏との第3回閣僚級通商協議を北京で開催。米中は共に、北京で行った通商協議で3750億ドル(約41兆円)に上る中国のモノによる対米貿易黒字の削減方法に関して一定の進展があったと発表。(Bloomberg News6月4日)

④ 2018年6月3日:中国の劉鶴副首相とロス米商務長官の会談後、新華社は、米中の合意は「両国が互いに歩み寄り、貿易戦争を行わないことを前提とすべきだ」とし、「米国が関税引き上げなど貿易制裁を導入すれば、両国が交渉した全ての経済・貿易合意は無効化される」と警告。(出典:ロイター6月4日)

⑤ 2018年7月6日:制裁関税第1弾を発動。

⑥ 2018年7月13日:米商務省は、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に科した米国企業との取引禁止の制裁を解除したと発表。

 商務省は4月中旬、ZTEがイランなどに米国製品を違法に輸出し、米政府に虚偽の説明をしたため米国企業との取引を7年間禁じる制裁を科した。

 ドナルド・トランプ大統領が5月中旬に習近平国家主席から頼まれたとして制裁見直しを表明。米中の貿易協議で中国側から譲歩を引き出す交渉材料とする構えをみせていた。(日経7月12日)