「・・・他のテストも準備せずに受けて、問も読まない。答案用紙の裏に、自分の書きたいことをぎっしり書いて出したら、点をくれました」

 「卒論も、参考文献なんか1冊も書かずに、1週間で原稿用紙100枚をでっち上げで書いたら、(早大で授業を持っていた演劇研究者)印南高一さんがAプラスの評価をくれ、『君はものを書く道に進んだ方がいい』とアドバイスしてくれました」

 「僕は当時『この人、ぼけてるな(笑)』と 思ったけれど、後になって感謝しています」

 ここで、この作家の「コルサコフ作話症的」性向が決定づけられたのだと思います。

 問も読まずに自分が書きたいことをぎっしり書けば、点はつくのだ。

 卒論も、参考文献なんか1冊も記載せず、つまり精密に資料をチェックして跡付けるといった知的作業は行わず、1週間で原稿用紙100枚を<でっち上げで書いたら>プラスAの評価を詐取できた・・・。

 これに味を占めてしまったために、あんなことになってしまったのでしょう。

 さらにここで最低最悪なのは、そのような評価をかすめ取った印南高一(1903-2001)早稲田大学名誉教授・元文学部長(英文学)を、あろうことか「このひと、ボケてるな」と思って舌を出している。

 どうしようもなく低劣な青年の本音が垣間見えているところと思います。

 当時、すでに70歳近かったであろう印南高一氏がどれくらい「ボケて」いたかは、いまや故人ですから全く分かりません。