情報が管理されているために、中国人自身がこのような事実を知らない。日本人は上海などに滞在する日本人を通じて中国を知ることが多いが、中国に住む日本人は、案外、中国についての情報を持っていない。中国の体制は、北京や上海に住む人々(特権階級)が利益を享受するように作られているので、そこで地方や少数民族の不満を聞くことはないからだ。
歴史はまたもや繰り返されるのか
今後、米国との貿易戦争によって、上海や深センなど経済が順調に発展してきた地域でもバブルが崩壊したり失業率が上昇したりし始めると、民衆の不満を力で抑えるために、現在新疆ウイグルで行われているような徹底的な管理が行われるようになろう。共産党体制に文句を言う者は、「習近平思想」を学習しなければならなくなる。我々が、鄧小平が始めた改革開放路線以降ここ40年ほど見て来た中国とは、大きく異なる中国が出現する。
中国は国が大きいために中央の力が少しでも衰えると、地方が中央の命令に服さなくなる。それを防ぐために、どの王朝も衰えが見え始めると反体制派に対して過酷な取り締まりを行う。人々はそれに一層反発するために、国内は混乱状態に陥り、そして分裂する。それをまた偉大な英雄が統一する。これが中国史の基本である。
習近平政権は、民衆の不満を抑えるために強権を用い始めた。それは中国共産党支配の終わりの始まりと言ってよい。
(*)拙著『習近平のデジタル文化大革命』 (講談社+α新書) の中で、以上のことをさらに詳しく解説した。手に取っていただければ幸いである。