習近平政権は経済も外交も失敗だらけ

 なぜ中国は世界の評判をも省みずに、このような強引なことを行うのであろうか。

 私はそれを中国が再び文化大革命に走る前兆と考える。では、なぜ今、文化大革命を行わなければならないのであろうか。

 よく知られているように、中国共産党のレジデマシー(統治の正統性)は経済成長にあった。「豊かになるのだから、黙って共産党に従え」というわけだ。それが実現している間、人々は共産党の支配を受け入れてきた。農民戸籍など格差の問題もあるが、経済が成長すれば自然に解決されると思っていた。

 しかし、習近平が総書記になった頃から経済成長に陰りが見え始めた。それに対応して、どの国でも行うことだが、景気のテコ入れのために巨額の公共投資を行った。だが、それは効率のよい投資とは言えず、地方政府と国有企業は巨額の負債を抱え込んでしまった。現在、その処理を誤ればバブルを崩壊させかねない事態に至っている。

 もう1つ。習近平政権は「中国の夢」をスローガンに、一帯一路政策を推し進めたりAIIBなどを設立することによって、民衆の目を海外に向けようとして来た。しかし、マレーシアやモルディブに反中政権ができるなど、それが失敗だったことが明らかになり始めた。そして、南シナ海などでの強引な膨張政策は、あろうことか米国との深刻な対立を招いてしまった。習近平の対外政策は失敗だらけである。

 経済もダメなら外交もダメ。格差も解消されない。それでは民衆は不満を持つ。そんな状況で残された方法は、力ずくで民衆を押さえることしかない。今回の海外への影響を無視した措置には、そのような危機感がにじみ出ている。そして、習近平の思考方法もにじみ出ている。それが文化大革命である。