リンカーン、2人のルーズベルト、ジョンソンの共通項

 その最中、知識層の間で読まれている本がある。

 歴代大統領の研究では右に出るものはいないとされているコロンビア大学の歴史学者、ドリス・カーンズ・グッドウィン博士の新著、「Leadership: In Turbulent Times」(激動期におけるリーダーシップ)だ。

 同博士は歴史学とともに精神分析学(Psychanolytic theory)を極めており、歴史の「主人公」たちを深層心理面から分析するという独特の手法をとっている。

 著者が本書で取り上げた歴代大統領は4人。

 エイブラハム・リンカーン第16代、セオドア・ルーズベルト第26代、フランクリン・ルーズベルト第32代、リンドン・ジョンソン第36代各大統領だ。

 4人の大統領の間には共通項がある。

 幼年期、青年期、壮年期にそれぞれその後の人生に強いインパクトを与えた挫折、トラウマを経験している点だ。

 リンカーンは父親から厳しく躾けられたこともあってか、極端な人嫌い。小学校ではまさにいじめの対象にされる日々だったという。

 成人になってもその挫折感を引きずったために人間関係がうまくいかなった。「リンカーンのストイックな生きざまと、時々見せる皮肉なウェットはその副産物だった」というのだ。

 セオドア・ルーズベルトは、裕福な家庭に育ったが、大人になって同じ日に愛妻と母親が他界するという悲劇に接し、極度の挫折に陥った。

 フランクリン・ルーズベルトは小児麻痺に襲われて、生涯そのハンディキャップを背負いながら大統領にまでなった。

 そしてジョンソンにとっての挫折は、政界入りを目指し、テキサス州から上院議員選に挑戦したものの敗れてしまったことだ。その挫折感は生涯つきまとったとされる。

 さらに共通していることは、その挫折感をバネにそのトラウマを克服するだけの並外れた回復力を兼ね備えていたことだ。