国難を乗り越えたリーダーシップの原動力はトラウマ
4人はともに米国史上最大の危機に直面している。
リンカーンは南北戦争の最中、大統領になり、1863年には黒人奴隷解放を宣言。65年には憲法修正第13条(奴隷解放)署名、南軍が降伏して南北戦争が終結した直後には暗殺される。
合衆国が南北に分かれて戦った危機をリンカーンは文字通り身を賭して打開した。
セオドア・ルーズベルトは1901年ウィリアム・マッキンリー第25代大統領の暗殺を受けて昇任、緊張が高まる欧州や極東をにらみながらアジア系移民排斥に奔走した。
今ラティーノ系や中東系移民に厳しい措置をとっているトランプ大統領と一脈通じるところがありそうだ。
フランクリン・ルーズベルトは1933年から45年まで12年間の長期政権下で29年の大恐慌以後の米経済立て直し、対外的には日本軍による真珠湾攻撃を受けて、対日宣戦、対独伊宣戦に踏み切り、45年には日独伊降伏により第2次大戦を終結させた。
世紀のヤルタ会談直後に病死した。まさに米国が直面した激動期にリーダーシップを発揮した大統領だった。
著者はこれら4人の弱点や失敗についても容赦なく分析している。
例えばリンカーンの人種的平等主義の限界、セオドアの帝国主義者的自惚れ(Imperialist swagger)、フランクリンのナチスから逃れてきたユダヤ人入国拒否、ジョンソンのベトナム政策の失敗などだ。
「人間には欠点はつきものだ。そうした弱点や失敗にもかかわらず、それでも彼らは国家の緊急事態の最中、反対する勢力に対し真っ向から対決し、自らの信ずる主張を貫き通した」
「彼らには謙虚さなどはなかった。それが彼らが示した米国という国家の持つ偉大さだし、偉大なリーダーシップだった」