筆者のビジネスに対する考え方も読み取れます。「私たちはすべての偉大なビジネスと同様に、創造し、貢献したいと考え、あえてそれを声高に宣言した。何かを作り改善し、何かを伝え、新しいものやサービスを、人々の生活に届けたい。人々により良い幸福、健康、安全、改善をもたらしたい」とあり、単にお金を稼ぐことではないと断言。ソニーのような会社を目指していたという記述からも、革新的で魅力的な商品を世の中に出し続けたいという思想が感じられます。

 最後に、若者に対する筆者のメッセージを紹介しましょう。「20代半ばの若者たちに言いたいのは、仕事や志す道を決めつけるなということだ。天職を追い求めてほしい。天職とはどういうものかわからずとも、探すのだ。天職を追い求めることによって、疲労にも耐えられ、失意をも燃料とし、これまで感じられなかった高揚感を得られる。」 若手ビジネスパーソンにぜひ読んでほしい1冊です。

【3位】『10年後の仕事図鑑』(落合陽一・堀江貴文著、SBクリエイティブ)

10年後の仕事図鑑』(落合陽一・堀江貴文著、SBクリエイティブ)

『日本再興戦略』の著者でもある落合陽一氏と、堀江貴文氏が提言するこれからの仕事論。全部で7章あり、基本的には落合氏と堀江氏が交互に持論を展開していきます。途中、2人が考える「なくなる仕事・変わる仕事」や「生まれる仕事・伸びる仕事」も紹介されており、各々の仕事に対する未来予測は今後の自分のキャリアを考える参考になるでしょう。

[本書のまとめ]

「人対コンピュータで考えた場合、同じ土俵、同じ統計的プロセスで競うと人間は機械に勝てない」と落合氏は主張します。それは、データの蓄積によって機械はどんどん強くなっていくからです。しかし落合氏が言うには、コンピュータには「これがやりたい」という動機がありません。したがって「何をやるか決まっていない状況」では、人間は機械に勝てるのだそう。つまり、これからは主体性を持って自分で仕事を創出していくことが求められるということです。

 一方の堀江氏は、「なくなる仕事リスト」など血液型占いくらいの精度であると主張しています。1年後すら予想できない現代、10年後の未来を想像することに意味はないと述べています。オックスフォード大学のオズボーン教授の研究によって「仕事はほぼ半減する」と言われていますが、それを恐れているよりも、好きなことを極めてお金を稼げるようになるほうが結果的に将来生き残れるのだと言います。

 全体的には、AIによって仕事が奪われるという不安よりも「明るい未来」を目指すための考え方の切り替え方についてのアドバイスが多い印象です。2人の主張の根底には、仕事は「受けるもの」ではなく「つくるもの」であるというものがあり、これはAIに代替されない人材となるための1つのヒントになることでしょう。