西日本を襲った「平成30年7月豪雨」は土砂崩れや河川氾濫などを引き起こし、200人以上の死者、3万戸以上の家屋の浸水といった甚大な被害をもたらした。政府や自治体は豪雨対策の強化を進めているが、同様の災害はまた起こり得る。日本の治水は根本的な問題点を抱えているからだ。元国土交通省河川局長の竹村公太郎氏(日本水フォーラム代表理事)が、歴史的観点から日本の都市の危険性と未来に向けての解決策を解説する。
日本の平野の原風景
日本は極めて特異な文明を創ってしまった。日本列島の中央を走る脊梁山脈から流れ出る河川の沖積平野に都市を造ってしまった。
沖積平野とはかつて海や湖だったところに、河川が運ぶ土砂が堆積した平地である。そこは肥沃であったが、洪水に対して極めて危険な土地であった。
6000年前の縄文前期、地球の温度は現在より平均で約5℃高かった。そのため大陸の氷河は融け、温度の高い海水は膨張し、海面は現在より約5m上昇していた。いわゆる縄文海進と呼ばれている現象である。
図1は、21世紀の関東地方の地形図である。
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53619)
図2は図1の海面をコンピューターで5m上昇させて作成したもので、6000年前の縄文前期の関東地方の地形を表している。東京湾の海水は関東の奥深く、栃木県と群馬県の県境の渡良瀬遊水池の近くまで達していた。
提供:(財)日本地図センター
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図3は家康が江戸に入ったころの関東平野の地形図である。
提供:(財)日本地図センター、作図:竹村・後藤
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