ニュートリノ天文学は、創始と同時に、超新星爆発にともなって中性子星が誕生する様子を描き出し、超新星爆発の理論的研究を直接に証明し、ニュートリノが質量を持つことを確実にし、ニュートリノ振動という新しい物理現象を支持しました。新しい観測手段で天体を観測すると、物理学がめっちゃはかどるのです。
カミオカンデチームを率いた小柴昌俊・東京大学名誉教授(1926-)は2002年のノーベル物理学賞を受賞しました。太陽ニュートリノを検出したレイモンド・デイヴィスJr.博士(1914-2006)との共同受賞です。
しかし1987年以後、天体からのニュートリノはなかなか検出されませんでした。ニュートリノはさまざまな装置でしょっちゅう検出されていて、中には宇宙由来のものも混じっていることは確実なのですが、どの天体からやってきたのかバシッと分からないと、天体を観測したとはいえません。
そうして、太陽と超新星1987Aだけが検出された状態で、ニュートリノ天文学は30年が経過しました。
アイスキューブは南極の氷でニュートリノを検出する
さてようやく本題です。アイスキューブ(IceCube)はこれまた大規模でユニークな(ミュー)ニュートリノ検出器です。
ニュートリノの検出物質として用いるのは、南極大陸を覆う厚さ数kmの氷です。氷に深さ2.5kmの縦穴を86本掘り、それぞれに光センサーを60個埋め込みます。
絶えず降り注ぐニュートリノは、厚さ数kmの氷などすかすか通り抜けてしまうのですが、ごくまれに、水分子中の酸素や水素の原子核と衝突反応を起こします。すると生じた光がセンサーで捉えられ、入射したニュートリノのエネルギーや方向が測定されます。