その新生ブロードコムが、1170億ドルでクアルコムに対して買収を提案した。しかし、クアルコムと中国最大のスマホメーカーのファーウエイが、次世代通信5Gを巡って規格争いをしていた。ここで、もし、クアルコムが新生ブロードコムに買収された場合、5Gの通信規格を中国側に握られる危険性があると、米国側が判断した。その結果、この買収を米国が「大統領令」により阻止した。
(2)米国がZTEに対して輸出規制
次に、米商務省は4月16日、米企業に中国のスマホメーカーZTEへの製品販売を7年間禁止する決定を下した。その理由は、ZTEが2010年から2016年にかけて、米国の輸出規制に違反し、イランや北朝鮮にスマホ等の通信機器を輸出していたからである。米商務省の決定により、ZTEにインテルやクアルコムの半導体チップが供給されなくなった。
このような輸出規制は、スマホの出荷台数で、アップルやサムスン電子に次いで、世界第3位に成長した中国最大のスマホメーカーのファーウエイにも適用される可能性もあった。
その後、米国によるZTEへの制裁は、巨額の罰金と経営陣の入れ替えなどを条件に解除される見通しとなった(日経新聞、2018年6月9日)。ここに至るまでに、中国の習金平国家主席が、何度もトランプ大統領に電話をして、ZTEへの制裁を解除するよう申し入れたという。
(3)中国がクアルコムによるNXP買収に難色
米国側から2回もビンタを食らった中国も黙っていない。クアルコムは、2016年10月に、オランダのNXPセミコンダクターを440億ドルで買収することで合意していた。後は、各国の独禁法の審査待ちとなり、残すは中国一国だけになっていた。
クアルコムは通信半導体メーカーであり、NXPは車載半導体メーカーである。クアルコムは、自動運転車の分野への進出を目指して、NXP買収を提案した。同じ半導体と言っても、分野が異なる2社間の買収であり、独禁法に抵触する可能性はほとんど無い。
ところが、中国商務省がこの買収に突然待ったをかけた。その結果、クアルコムは2018年4月19日、中国への独禁法の再申請をする羽目になった。これは明らかに、米国に対する中国の嫌がらせである。中国が米国へ1発ビンタを張りかえしたのだろう。
(4)米ベイン率いる日米韓連合による東芝メモリの買収に中国が難色
上記のように、米国が2発パンチを繰り出し、中国が1発お返しした状況で、今年5月末に、東芝メモリの売却に関する中国での独禁法の期限を迎えようとしていた。ことと次第によっては、中国が2発目のパンチをお見舞いすることが想定された。