もし、米ベイン率いる日米韓連合が東芝メモリを買収したら、中国が損害を被ることが明らかだったからである。というのは、東芝メモリのNANDの多くは、中国のスマホに搭載されている。ところが、日米韓連合に買収されると、その中の米アップルや米デルが東芝メモリのNANDを独占し、ファーウエイやZTEへのNANDの供給を制限する可能性があった。

 ということを考えると、中国が独禁法の審査で「NO」を突きつけるのではないかと思われた。しかし、現実には、中国が期限より10日以上早い5月17日に、独禁法の審査に許可を出した。これは、水面下で、「米国がZTEへの制裁を解除する代わりに、中国は米ベイン等による東芝メモリの買収を認めろ」というような米中の取引があったのではないかと考えている。つまり、東芝メモリの買収劇は、もしかしたら綱渡りだったのかもしれない。

(5)中国がマイクロンにメモリの生産・販売中止命令

 米国が中国に2発ビンタを張り、中国が1発張りかえした。中国は沽券にかけて、何としてももう1発張り返さなくては気が済まなかった。

 そこで、DRAM3社を独禁法の容疑で調査した。ところが、調べても調べても、談合の証拠は出てこなかった。DRAM3社は密談などしていなかったから、当然である。

 そこで、中国当局は、DRAM技術の流出を巡って、マイクロンと係争になっている訴訟を利用して、マイクロンにメモリの生産・販売の命令を下した。これは、中国による米国への明らかな嫌がらせであり、2発目の強烈なビンタである。

 この中国の2発目のビンタは、メモリ販売の51%を中国に依存しているマイクロンにとっては、致命傷になる可能性がある。

 これで、米国2発に対して中国が2発張りかえした。「やられたら、やり返す」。次は、どちらが、どんなビンタを張るのか。その前に、マイクロンは、この窮地を乗り越えられるのだろうか。米中のハイテク戦争から目が離せない。