決して嫌味と取らないでいただきたいのですが、この程度の表記が、日本国内ではほとんど通用しないのです。むしろ、強い反感を感じさせるリアクションが少なくありません。随所で経験してきました。
私が日経ビジネスオンラインに経済コラムを連載し始めて12年目になりますが、当時から一貫して担当している川嶋諭さんは日本に1人しかいない、こういう表記を一般向けにも認めてくれる編集者で、必要に応じてこの種の書き方も使うようにしてきました。
しかし、どことは言いません、と言うよりほとんどすべての一般メディアでは、こうした表記は「誰も分からないからやめてくれ」と言われます。
岩波書店「思想」では、高校1年の三角関数を「こんなの誰が読むんですか・・・」と原稿全体を没にされました。
以前のT編集長では絶対になかったことなので、正直唖然としましたが、結局「ピケティも使っているから」と不等式を1つだけ残したところ、それでOKが出るというような始末。
これが日本の現実の水準と諦め、こういう原稿は分別して書いています。
でも、例えば金融工学などをまともにやろうと思ったら、こうした道具立てよりもう少し面倒なものから、慎重に準備しなければ出発点につけません。
「記号が分かりにくい」ではないのです。その記号が採用されるには、それだけの過不足ない訳がある。
微分演算で結ばれているから、変化率だと理解できるし、逆演算、積分すれば議論を先に進めることができる。
ベクトルで表記されていればこそ、3次元空間の自在な運動に縦横に対応して、実際に使える水準の入り口に立つことができる。