安中氏によると、「週4正社員」制度を導入しようとする企業には、主に以下の3つの大きな障壁が立ちはだかるという。

(1)労働時間の問題(労働時間が把握されていない&サービス残業が横行している)
(2)賃金制度とコストの問題(賃金コストが増加する場合がある)
(3)労働生産性低下への懸念
 

 特に(1)労働時間の問題は深刻だ。「とにかく、サービス残業が多すぎます。労働時間を正しく把握していない状況では、フルタイム正社員と同じ土俵で賃金設定をすることが難しくなります。そのため、ほとんどのケースで新制度を導入する前に正社員の労働時間管理の適正化から着手することになります」(同氏)。

 週4正社員制度における賃金設計の基本的な考え方は、「時間給」にすれば一般正社員と同様になるというもの。しかし、サービス残業が横行し、時間給を計算するための「労働時間」が間違っていれば、公平な賃金設定ができなくなってしまうというわけだ。

 また、(2)賃金制度やコストの問題は、日本ならではの事情もあるようだ。「日本では給与=生活保障という考え方が根強く、一律支給の手当が多いのが特徴です。そうした手当を維持したままで、『週4正社員』の数を増やせば、その分の賃金コスト増は覚悟しなければなりません」(同氏)。

 そして、(3)労働生産性低下への懸念は、社員が会社にずっといることを前提とした仕事の仕方をしていたり(夕方からの会議など)、会社に長時間いるほど能力が発揮されると思い込んでいる場合に、よく出るものだという。

課題に向き合えば、生産性は向上する

 ただし、(3)労働生産性低下への懸念は、課題に向き合うことで払拭できる障壁だと安中氏は強調する。

「残業前提、在席前提の仕事の仕方を見直し、インフラ整備を含めて、時短のための社内改革を進めれば、生産性はむしろ向上します」