認知症のある独居高齢者の増加
独居高齢者をどのように支援するか――。我が国が抱える深刻な課題だ。
2015年の65歳以上の独居高齢者は、男性約192万人・女性約400万人だ。高齢者人口に占める割合は男性13.3%・女性21.1%。2025年には男性約229万人・女性約471万人、2035年には男性約260万人・女性約501万人と推定されている*1。
独居高齢者の中には、認知症を抱える人もいる。認知症の有病率推定値は15%であり、有病率が一定だとすると、認知症のある独居高齢者の推計は、2015年には約89万人、2025年には約105万人、2035年には約114万となる*2。
認知症のある独居高齢者の現状はどうなのか、そして、打開策はあるのだろうか。
救急車の同乗者が居ない独居高齢者
週1回、入浴介助のサービスを受けていた80代の軽度認知症の方がいた。入浴介助や内服薬の管理などの支援を要していたが、それ以外は自立して生活していた。
ある日、買い物に出た時、路上で倒れた。頭部を強打したため、一刻を争う事態であった。直ぐに救急隊が到着したものの、救急車に同乗する身内がいない。
本人には、近くに住んでいる血縁のない親戚が1人だけいたが、救急車への同乗を拒否した。
遠方に住んでいる血縁のある親戚に連絡がつき、何十年も会っていなかったようだが、書類上で必要な手続きのみ協力を得られることになり、普段から関わっているヘルパーが救急車に同乗することになった。
対応困難事例は、搬送先の病院が見つかりにくい。いわゆる“たらい回し”も起こる。一刻を争う状態にもかかわらず、結局1時間以上放置された。
やっとのことで見つかった病院に搬送されたが、時は既に遅かった。大きな後遺症が残り、寝たきりとなってしまった。
急変の可能性がある持病をもち、普段からかかりつけの病院があり、いざという時に救急搬送や入院を引き受けると言ってくれている病院がある場合はまだいい。