トランプ大統領の支持率は上昇している。トランプ大統領の決定は選挙対策として功を奏したことになる。そして、もう1つ注目しなければならないことは、過激な反対運動が巻き起こったとの報道を聞かないことだ。彼が移民を侮辱するような発言をした際には、多くの市民がデモを行うなど強い抗議の声を上げている。しかし、今回、輸入制限措置に対して強烈な反対運動が起こったとのニュースを聞いたことはない。

 ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ氏など一部のインテリは、世界経済を“めちゃくちゃ“にするとして今回の決定に怒りの声を上げている。だが、支持率が上昇したことからも分かるように、平均的な米国市民はトランプ大統領の決定を好意的に受け止めている。そして、輸入制限措置によって不利益を受ける業界からも、報道を聞く限り、強硬な反対論は噴出していない。多くの平均的な米国人はトランプ大統領の決定を暗黙の裡に支持し、ことの成り行きを見守っている。

世論の変化を見逃さなかったトランプ

 これはまさに中国が「ツキジデスの罠」にはまったことを意味する。トランプ大統領が“Make America Great Again”をキャッチフレーズとして当選したことからも分かるように、平均的な米国人はアメリカが覇権国家であることを望んでいる。だから、第2次世界大戦後に覇権国としての米国に挑戦したソ連、そして日本を許すことはなかった。そして、現在、その矛先は中国に向かっている。

 日本は1980年代、エズラ・ヴォーゲル氏の著書“Japan as Number One”に喜び、「ノーと言える日本」などと題した本を出版して無邪気にはしゃいでいた。だが、それは米国の怒りを買い、バブル経済の崩壊につながった。

 バブル崩壊の直接の原因を米国の陰謀と捉えることは間違いだと思うが、米国が対日貿易赤字の削減に動き出したことによって日本は富の源泉を失い、それが不動産バブルの崩壊につながったことは事実であろう。

 中国は日本のバブル崩壊に学ぶとことによって、不動産バブルを崩壊させない金融テクニックを身に付けたと豪語している。実際、これまでバブルは崩壊していないから、一定の効果を上げたことは確かだろう。