文中敬称略
米大統領のドナルド・トランプが環太平洋経済連携協定(TPP)に戻ってくる――。
最終判断はまだ先だが、4月12日、トランプはTPPへの復帰に向けて、通商代表部(USTR)に検討を指示した。
実は今年1月、トランプは米テレビとのインタビューで「TPPの枠組みはひどいものだが、もし納得できる内容になれば参加には前向きだ」と、政権発足以来、初めてTPPに肯定的な発言をしていた。
2016年大統領選でTPPからの離脱を公約として掲げていた人物である。もし復帰すれば、180度の方向転換になる。
中西部の議員から強い圧力
トランプの心変わりの背景には何があるのか。いくつかの複合的な要因があると考えられる。
第1は中間選挙を前に、共和党の票田である中西部の農業州の連邦議員からトランプに圧力がかかっていたことである。少し複雑だが、簡潔に記したい。
米国は中国に巨額の知的財産を盗用されていたことから、トランプは3月22日、中国製品に対する制裁措置として鉄鋼とアルミニウムに追加課税を発表した。知的財産の盗用というのは、模倣・模造品を製造されているということである。
制裁発表の翌日、中国は米国産の128品目に高関税を課した。すぐにトランプは中国からの輸入品1300品目(約500億ドル)に制裁関税をかけるとしてリストを公表。
中国もさらなる制裁に動き、今度は米国産の大豆や自動車など106品目に25%の関税をかけると脅した。TPP復帰の背景には、こうした貿易戦争の幕開けがあった。