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AFP記者が見た日本、おもてなしと利便性の「コンビニエンスランド」

東京・中目黒の商店前に立ち並ぶ自動販売機(2017年9月4日撮影)。(c)AFP/Behrouz MEHRI〔AFPBB News

【連載第1回】

 2017年は日本が没落の一途をたどるばかりであることが明らかになった年でした。国際社会における日本のプレゼンスはこの30年で低下する一方であったのに対し、中国の成長は目覚ましく、世界経済は米・欧・中の三極体制に移行しつつあります。完全なる敗北と緩やかな衰退の中で日本が今やるべきことは、将来を全く視野に入れていない「人づくり革命」でも「生産性革命」でもありません。2017~2018年の世界・日本の動きを俯瞰し、2018年のビジネスに役立つ、大前研一氏による国と企業の問題・トレンド解説をお届けします。

世界全体に蔓延しつつある低欲望化傾向

 2017年を総括すると、「明確に潮目が変わった年」と言えるのではと思っています。これはある意味非常に“画期的”です。

 かねて私が述べている「低欲望社会(経済成長の頭打ちやさまざまな消費財のコモディティ化と普及など、複合的な理由によって消費行動が極端に萎縮した社会)」の現代日本ですが、これまで世界の中で日本がこれの先陣を切っていたのに、今や世界全体が低欲望社会化しつつあるという現象が見られ始めた、これが2017年の特色だと言ってよいでしょう。

 世界的にものすごくお金が余ってきており、これを消化しないという状態が、米国にも欧州にも、また世界全体に広まりつつあります。「金利が安くお金がだぶついているので借りて何かに使う、運用する」という時代ではなくなってしまったのです。

 人間の金に対する欲望というものが従来とは全く異なってきていて、これまでの20世紀の経済原論はもはや通用しない。この傾向が米国でも欧州でもかなり顕著に出てきたように思います。