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習氏と金氏、堅苦しい雰囲気をほぐすことはできたのか

中国・北京の人民大会堂で開催された歓迎式典に出席する習近平主席(中央)と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長(右)。北朝鮮国営の朝鮮中央通信提供(2018年3月26日撮影、29日公開)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS〔AFPBB News

(文:平井久志)

※本記事は、「金正恩「電撃訪中」裏事情(上)合致した北朝鮮と中国の「利害」」、「金正恩「電撃訪中」裏事情(中)中国が後押しする北朝鮮「非核化出口論」」に続くものとして新潮社フォーサイトに掲載された記事の転載です。

 中朝首脳会談で習近平中国共産党総書記(中国国家主席)は、中国共産党と中国は中朝友好関係を非常に重要視しているとした上で、(1)新たな情勢下での習総書記と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の相互訪問を含め、特使の相互派遣、書簡のやりとりなど日常的な連絡を保持し、上層部交流を行う(2)戦略面の意思疎通という伝統的方法の十分な活用(3)地域の平和・安定・発展の積極的促進(4)両国民の交流・往来を強化し、中朝友好の民意の基礎を固める――の4方針を示した。

習総書記はいつ訪朝する?

 金正恩政権がスタートしたのは2011年12月。それから6年余で、金党委員長はようやく中国の地を踏んだ。一方、習近平総書記は2014年7月に韓国を訪問したが、北朝鮮は訪問していない。最高首脳同士の相互訪問は、中朝関係正常化の根幹だ。

 金党委員長の訪中が実現したことで、次は習総書記の訪朝がいつになるかが焦点になる。北朝鮮側の発表では、「金正恩委員長は、党と政府の名義で習近平主席が便利な時期に朝鮮を公式訪問することを招請し、招請は快く受諾された」としたが、中国側発表では習総書記の訪朝に関する言及はない。

 香港の「中国人権民主化運動情報センター」は3月29日、ホームページで消息筋を引用しながら、習総書記が7月26日に訪朝する予定だ、と伝えた。

 7月27日は朝鮮戦争(1950~53年)の休戦協定が締結された日であり、北朝鮮では「祖国解放戦争勝利の日」である。中国は朝鮮戦争に人民義勇軍を送って参戦したため、中朝関係は「血盟関係」とされる。今年の7月27日は、その65周年という区切りの年である。北朝鮮としては、習総書記を呼ぶのに好都合な日ではあるが、逆に中国が「対米勝利」の日に「中朝」の団結を誇示するような訪朝を望むかどうか、である。5月までに行われる米朝首脳会談が成功しているかどうか、この時点での米中関係がどうなっているかで大きく左右されるだろう。

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