これはベンチャー企業では普通に見られます。ベンチャー企業の特徴は、それぞれの人が、「明確な自分の選択の結果、今、ここにいる」と絶えず意識していることです。なぜ同年齢の友人より給料が少ないところで今自分は働いているのか? なぜ近い将来売り上げがあるかどうか分からない事業を、今自分はやっているのか? なぜ成約の見込みのない取引先開拓を延々と続けるのか? それらは明確な自分自身による主体的な選択の結果であり、誰かから強制されたわけではありません。経営者のビジョンに共感したり、将来の大きな可能性に賭けたり、動機は人それぞれですが、主体的・意識的に自分で選択したことをやっている、という感覚が非常に重要なのです。

 こうした自覚的なフォロワーの集まる組織は、定期的な辞令で配置され、命令で仕事をしている大企業の従業員とは全く異なるスピード感と主体性を持って仕事をしています。だからこそ、競争に十分勝てるわけです。

「服従者」ではなく「フォロワー」になる

 自分の選んだ社長、自分の選んだ会社だからこそ、トップの打ち出す戦略、会社の方針は100%支持し、その実現のために働くのが「フォロワーシップ」です。

「100%支持する」と言っても、意見を言わないわけではありません。ポジティブな意見は大歓迎されます。それでは、ポジティブな意見とはなんでしょうか?

 ポジティブな意見とは、会社の問題を自分のことのように真剣に考えた意見、ということです。言い換えると、自分の都合よりも会社の都合を優先する、ということです。

 たとえば顧客が競合に取られているとします。自分には関係ない誰か他人の問題とみて傍観者になるか、自分自身の問題と見るかです。自分自身の問題であれば、〇〇部門が協力をしてくれない、製品がおかしい、などなど、社内に摩擦を起こしてでも、解決すべき点を議論すべきです。他人との摩擦を起こすのがいやで黙っている人は、自分の都合を会社のそれよりも優先したことになります。しょせんは真剣に仕事をしていないことになるのです。