そんなとき海外の企業では堂々と本を読んだり、私的なメールを打ったりしている人がいるが、日本の会社ではなかなか許されない。そこで意味のない書類整理をしたり、他の社員と語り合ったりして時間つぶしをする。わざと仕事のペースを落として、時間稼ぎをしている人もいる。こうした行為は目立たないだけで、まったく価値がない。それどころか社員のモラール(士気)を下げ、組織の空気を沈滞させてしまう。

 そもそも空き時間を浪費することは会社にとっても、本人にとっても大きな損失である。「塵も積もれば山となる」で、年間に生じる空き時間を有効活用すれば新たな付加価値が生まれるはずだ。そこで空き時間を有効活用する「社内副業」制度を提案したい。

 社員は空き時間ができたときに取りかかれるよう、あらかじめ「副業」のテーマを登録しておく。主体性を尊重する意味からもテーマはあまり狭く制限すべきではなく、とりあえず会社と本人にとってプラスになるもの、というくらいの条件をつけておけばよいだろう。技術系なら興味のある分野の研究開発をしてもよいし、事務系なら「自社のイメージ戦略」とか、「IoTによる業務効率化のモデルづくり」といったテーマを手がけてもよい。

 社員の自発的活動といえば3Mの15%ルールやグーグルの20%ルールなどがよく知られているが、こうした自発的活動のなかから新製品や新規ビジネスが生まれるケースは珍しくない。

日本企業の弱点を補う効果も

 さらに日本企業の特殊性を考えた場合、つぎのようなメリットが期待できる。

 第1に、社内外にネットワークが広がる。

 新卒中心で転職が少ない日本企業では、ネットワークが社内に限定され、「井の中の蛙」になりがちだ。比較的自由な「副業」を通して社外に人脈が形成され、社内でも別の部署の人や関心を同じく人たちとネットワークができる。そこから情報や刺激も得られる。