5年の間には、この論文を勉強するための国際会議も開かれました。普段、日本国外で講演しない望月教授もTV会議システムで参加しました。ただしほとんどの聴衆は望月教授の説明を理解できなかったようです。
まだ正式に掲載されていない論文の勉強会が行なわれるとは、これも異例です。そうでもしないと理解が進まず、査読もできなかったのです。
そして関係者のそうした努力の結果、論文に誤りがないようだと結論され、ついに受理が決まりました。早ければ2018年1月にもPRIMSに掲載されるということです。
その証明は?
専門家も読解に苦労するこの600ページの望月論文、筆者もページをめくってみたものの、残念ながらというか当たり前というか、やはり理解できませんでした。(LaTeX*2でこんな数式が表示できるのか、と感心したので、ソースを見たくなりました。)
*2=数式入力などに定評がある組版処理システム。物理系や数学系の論文は、だいたいこれを使って書かれる。
ABC予想は整数について述べていますが、望月論文では、これを楕円曲線についての定理に置き換えます。さらにフロベノイドという新たな数学概念を作り上げ、これを用いて楕円曲線を扱い、証明を行なっているようです。
無責任なようで申し訳ありませんが、証明方法についてこれ以上詳しく知りたい方は、原論文を御参照ください。
それにしても、ABC予想は一見単純なのに、それを証明するとなると、新しい数学概念と600ページが必要だとは、数学の世界とそれを探求する人類の営みは、実に深遠です。