2012年の環太平洋合同演習(RIMPAC)で公開演習を行った「グリーンエネルギー大艦隊(Great Green Fleet)」。 Photo by U.S. Navy.

(執筆:星野 孝仁、執筆協力:出口 悠)

 東京など世界各都市で開かれるモータショー。そこでは各メーカーが力作のコンセプトカーを展示する。ビジョンやデザイン、新たな技術など、コンセプトカーは自動車の未来を魅せてくれる存在だ。自動走行する車や、電気や水素の力で走行する車など、コンセプトカーが体現する未来に共感し、その研究開発を応援する人々も多いことだろう。

 我々が研究している藻類バイオ燃料の分野においても、バスを走らせたり飛行機を飛ばしたりなど、未来を魅せるパフォーマンスは度々行われている。

 2012年7月、藻類バイオ燃料における世界最大級のパフォーマンスがハワイ沖で実施された。米軍が日本など21カ国と共に実施した合同軍事演習「環太平洋合同演習(RIMPAC:リムパック)」において、バイオ燃料を使った「グリーンエネルギー大艦隊(Great Green Fleet)」の初の公開演習を行ったのだ。巨大な空母を利用した大掛かりなパフォーマンスである。

 ここでは、米国のバイオ燃料ベンチャー旧ソラザイム(現コービオン) 製の「従属栄養方式」で生産された藻類バイオマス由来のバイオ燃料が、化石燃料と共に利用された。

 このパフォーマンスには、その後さまざまな批判が上がったが、それらの批判を含め包括的な議論をまとめた米国エネルギー省(DOE)による「National Algal Biofuels Technology Review」などの文献の刊行は、「夢」の主導者としての米国の矜持であると感じる。

光で育てる「光合成方式」と、エサを与えて育てる「従属栄養方式」

 RIMPACでのグリーン艦隊のパフォーマンスはなぜ批判されたのか。その原因の1つが、使用されたバイオ燃料が「従属栄養方式」で生産されたという点である。

 バイオ燃料の生産には、原料としてさまざまな種類のバイオマスが利用される。微細藻類(以下、藻類)由来のバイオ燃料であれば、その原料は「藻類バイオマス」となる。