どんな事業分野であれ、業界全体として、生産量が右肩上がりで上昇し続けている最中(さなか)に、やがて訪れるであろう急転直下の市場縮小を的確に予測することは難しい。
しかし、業界がまだ浮揚しているそうした時期にこそ、非連続・現状否定型の経営革新を行うべきことは、多くの事例が証明している。
1980年代後半のバブル経済絶頂期に、来るべき崩壊を予見して経営革新を断行した企業は、「バブル崩壊」とその後の「平成大不況」を乗り切ることができた。
それができた企業の数は、もちろん決して多くない。わずか2~3年先を予見することさえ難しいのだ。ところが、今回ご紹介する勇心酒造(香川県・綾川町)の5代目当主・徳山孝氏(76)は、実に半世紀近く前に、現代へとつながる時代の潮流を洞察し、自社の経営構造を変革。同社を現在の繁栄へと導いた。