黒豆。おせち料理にも出される。

 1935(昭和10)年創刊の月刊誌『栄養と料理』(女子栄養大学出版部刊)の2号目から付録についたのが1枚の小さなカード「栄養と料理カード」。健康に留意したおいしい料理が誰でも作れるように、材料の分量や料理の手順、火加減、加熱時間、コツなど納得のいくまで試作を重ね、1枚のカードの表裏に表現。約10×13cmの使いやすい大きさ、集めて整理しやすい形にして発表した。
 この「栄養と料理カード」で紹介された料理を題材に、『栄養と料理』に約30年にわたり携わってきた元編集長が、時代の変遷をたどっていく。

 通販やデパートなどが取り扱うおせち料理の予約販売は、日本の冬の風物詩。師走半ば、ふるさと納税の返礼品としておせち料理を、との新聞の全面広告を見て驚いた。和食が無形文化遺産に登録されて4年が経つが、私たち自身の食生活の実態はどうなのだろう。

 おせち料理といえば黒豆、数の子、田作り――祝い肴三種。それぞれ、「まめ」に暮らせるように、子孫繁栄を、五穀豊穣をと願う意味があり、日本の文化が表されている。食文化の伝承は、家で作らなくても、出来合いの品を並べて食べるだけで整うということか。

 わが家で豆料理といえば、お正月は乾物から煮る黒豆。ふだんはドライパックや水煮の豆を使ったサラダや、チリコンカン、ミネストローネ、五目豆などの煮物。そして、乾物の小豆で作る赤飯など。

 小豆は別だが、乾物の豆は下準備が必須だ。前日から水に浸して圧力鍋でゆでる。加熱時間には注意するが、火を消したあとは時間がやわらかくしてくれる。

 昭和期の「栄養と料理カード」から豆料理を探すと・・・。