東南アジアでよく出回る米国産いちご。価格は1パック800~1000円。皮が硬く、すっぱく、ジューシーでない。日本人には苦手なイチゴ!(筆者撮影、クアラルンプールの高級スーパー)

 イチゴのつる枝を台座につけて固定するため、イチゴは揺れたり、振られてもドーム状のふたに触れない。収穫から輸送、店頭まで一切、イチゴが傷にならないシステムだ。

 そのため完熟状態のイチゴも傷まないという。通常、イチゴは、熟す前に出荷し、日持ちさせるが、この方法だと、「今まで味わったことのない奇跡的な、完熟イチゴが食べられる」(尾崎教授)と話す。

 フレシェルで包装した完熟のスカイベリーは、世界の食品の優劣を競う国際味覚審査機構(ブリュッセル)で昨年、優秀賞の「三つ星」に輝いた。

 現在は、フレシェルの製造・販売を進めるとともに、次世代の自動収穫ロボットの実用化に取り組んでいる。

ピンチをチャンスに

 さらにこのイチゴの自動収穫ロボット。日本の農業が抱える「高齢化と後継者不足」という最大の課題解決にもつながるか、と期待される。また、ドローンを使って、カメラや人の監視ができない広い農地を、空からモニタリングすることも構想中。

 実現すれば、農作物の育成状況や、農地を荒らす動物などの侵入を管理し、リスク対策だけでなく、業務の効率化にも一役買うかもしれない。

 地元の栃木県も「夜間でもロボットなら収穫作業ができるし、農家の収入も増えるでしょう。さらに、ロボットが経験不足をカバーしてくれるので、農業経験がなくてもできる。若者が農業に興味を示すきっかけになるかも」とその将来性に期待する。

 日本の農業をロボットやドローンが救う。韓国や中国の模倣品に対抗する海外輸出戦略や技術が、日本の農業そのものを助ける。

 まさにピンチがチャンス。日本のお家芸はこれからも健在だ、という証かもしれない――。