“日本ブランド農産品”は、栽培技術や品種改良などで作られた高付加価値商品。特に果物は、甘く、ジューシーで、形が美しく、「フルーツの芸術品」と言われ、海外でも人気が高い。日本の農業の強みと、海外輸出の柱と位置づけられてきた。

 ジャパン・ブランドの高級農産品は海外で高値で売れるため、政府は2019年までの輸出額「1兆円」(約7500億円、2016年)を目標とし、遅れていた農産品の知的財産保護にようやく、乗り出した。

 農産品の模倣品流出を水際で止めるには、日本国内で新しい品種が市場に出てから4年以内に、海外で種や苗の品種登録をする必要がある。

 しかし、200万円前後する費用は農家にとって大きな負担だった。このため、農水省は補正予算で3億円を計上し、今後、急ピッチで品種登録制度の整備を進める方針だ。

中国や韓国で模倣品が出ていると懸念される「シャインマスカット」。世界で初めて全商品「メイド・イン・ジャパン」を揃えるクアラルンプールの伊勢丹経営「ジャパン・ストア」でも人気の商品。ちなみに、お値段は、富裕層の中華系がお好きな数字の「999.9リンギ(約2万6000円)」(筆者撮影、クアラルンプールのジャパン・ストア)

忘れられない日本の味

 「忘れられないあの日本の味が、再び、マレーシアで味わえるとは」――。

 政府がジャパン・ブランド保護を側面支援する一方、これまで韓国や中国で模倣の格好の標的となっていた、日本のイチゴ収穫量トップの栃木県は、イチゴの高品種「スカイベリー」の商標を、マレーシア、インドネシア、シンガポールなどで商標を取る準備を始めた。

 東南アジアでいち早く「スカイベリー」を日本から輸入したのはマレーシアの貿易会社、カイシェン・トレーディング。

 まずは、旧正月の贈答品用にと、「赤くて、大きい」スカイベリーに目をつけた。

 スカイベリーは、普通のイチゴの3~4倍の大きさで、なんと「1粒約25グラム以上」。真っ赤でしかも、光沢があるその容姿は、まるで巨大なルビーのようで、まさに「フルーツの芸術品」だ。

 イチゴらしい円錐形を美しく保ち、糖度が高く、食べると、じゅわっと中から甘~い果汁があふれ出し、酸味が見え隠れする。食感も味のバランスも、従来のイチゴと一線を画し、印象的だ。