しかし、上記研究も症例数が少ないことが指摘されており、依然として臨床的有用性を証明するエビデンスが限られている分野である一方、関心が高まっている分野と言える。
その中、6月4日、転移性固形腫瘍患者において日常的に化学療法を受けている方を対象として、電子患者日誌を使用して12症状を報告した時の影響を検討する前向き研究(NCT00578006)の全生存期間(OS)解析の結果を、米ノースカロナイ州立大学ラインバーガー総合がんセンターのEthan M. Basch氏が発表した。
なお、主要評価項目である健康関連の生活の質(HQOL)については、2016年2月にJournal of Clinical Oncologyにて報告されているが、本記事はこれにも言及する。
766名が参加したタブレット等を用いた電子患者日誌の臨床研究
患者は12症状について5段階評価で入力。問題があれば看護師へアラートが通知
本試験は2007年9月から2011年1月の間に米メモリアル・スローン・ケタリングキャンサーセンターにて転移性固定がん766名(乳がん19%、肺がん26%、泌尿器がん32%または婦人科がん23%)が登録された。
参加者は電子患者日誌を使用するグループ(441名;電子患者日誌群)、または従来の診療を行うグループ(325名;未使用群)に割り付けられた。また、参加者はコンピューター未経験者(227人;電子患者日誌群155名、未使用群72名)とコンピューター経験者(539名;電子患者日誌286名、未使用群 253名)が一定の割合で割り付けられた*。その他、年齢中央値は61歳、男性42%、女性58%、教育水準は大学院修了以上30%、大学卒47%、高校卒業以下22%だった。
*原則1:1で割り付けられ、コンピューター未使用の方のみ電子患者日誌群と未使用群は2:1で割り付けられた。