他にも、「時代」に左右されやすいという点がある(時代バイアスとも言えるだろうか・・・)。医療研究がIT革新に追いつかないというジレンマがある。例えばこの研究が開始したのは2007年であるが、スマートフォンが普及し始めた頃だった。現在、RWD、AIやIoTなど、10年前はあまり耳にしなかった言葉が医療分野にも進出してきた。

 一方、論文によると、システム開発費用、サーバー費用、メンテナンス費用、タブレット費用および医療者の業務時間(人件費)に対して、「控えめ」だったと言及している。たしかに、システム開発は薬剤開発よりもかなりコストが「控えめ」である。

 この研究結果より、「我慢する方が多い日本人の患者では差が出やすいかもしれない」と考える一方、「医療がきめ細かくシステマチックな日本では工夫が必要だ」とも考える。

 日本においても、現在、いくつかの研究グループでこういった研究を実施していることを耳にするし、同じようなePROを見たことがある。

 IoTががん医療を変える日が来ることを信じて待ちたい。

※この記事に利益相反はありません。

【参考】

Overall survival results of a randomized trial assessing patient-reported outcomes for symptom monitoring during routine cancer treatment.(ASCO2017 Abstract LBA2)

Web-Based System for Self-Reporting Symptoms Helps Patients Live Longer(ASCO News Releases)

Overall Survival Results of a Trial Assessing Patient-Reported Outcomes for Symptom Monitoring During Routine Cancer Treatment(JAMA. Published online June 4, 2017. doi:10.1001/jama.2017.7156)

Symptom Monitoring With Patient-Reported Outcomes During Routine Cancer Treatment: A Randomized Controlled Trial(DOI: 10.1200/JCO.2015.63.0830 Journal of Clinical Oncology 34, no. 6 (February 2016) 557-565.)

可知 健太

東邦大学大学院 理科学研究科 生物分子科学専攻修了後、商社を経て、オンコロジー領域の臨床開発に携わる。2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、責任者を務める。一方で、医師主導治験のモニタリング業務に携わる。理学修士。免疫学専門。

*本稿は、がん患者さん・ご家族、がん医療に関わる全ての方に対して、がんの臨床試験(治験)・臨床研究を含む有益ながん医療情報を一般の方々にもわかるような形で発信する情報サイト「オンコロ」の提供記事です。