矢島氏が「和える」の事業を手掛けるまでは、右下の「時代遅れ・停滞タイプ」に属する伝統産業も少なくなかったと考えられる。すなわち、伝統を守ろうとする意志が強固なのはよいのだが、時代の変化に即した「革新」に関して、自力では、どうしてよいか分からないというタイプだ。何もしなければ、そのまま時の流れに置いていかれてしまう。

 その一方、環境変化に即した「革新」の重要性を理解しているものの、何を変えるべきかの識別が不適切で、変えてはいけない部分を変えてしまい、結果的に衰亡を早める「迷走タイプ」がある。食品・飲食関連の老舗における偽装事件などを挙げるまでもあるまい。

 また、伝統には、守るべきことと変えるべきことがあるという認識すらなく、時代に流され、中途半端な対応を繰り返し市場から退場していく「自然消滅タイプ」もある。

 以上に対して、矢島氏の事業は、不変の対象と革新の対象とを的確に“識別”した上で、「革新」の対象に関しては大胆な変革を実現している。ソーシャルイノベーションデザインをミッションに掲げる会社「NOSIGNER」を社外パートナーとし、“0から6歳の伝統ブランドaeru”のデザイン協力をしてもらっているのも、その一例であろう。

 それでは、なぜ彼女には、そうした的確な“識別”が可能だったのだろうか? それを次回、明らかにしてみたい。

東京・目黒にある東京直営店aeru meguroの内観