地方創生の流れの中で、1次産品のブランド化と6次産業化が全国的に進み、さらには、縮小する国内市場に見切りをつけて、産品と加工品によるグローバル進出が急増している。世界的和食ブームがその追い風になっていることは言うまでもない。
ところが、海外で、唯一、ほとんどまったく受け入れられない日本の食品がある。梅干しである。欧米であれ中国であれ、多くの場合、口に入れた瞬間に吐き出されてしまうという。
こうした事態を前に、紀州南高梅(きしゅうなんこううめ)の梅干しの製造販売を手掛ける勝僖梅(しょうきばい)の鈴木崇文専務取締役(46)は、グローバル市場に向け、奇策に打って出た。
2017年3月、世界77の国・地域から3282社が出展し、来場登録者数8万2434人を記録した「第42回国際食品・飲料展(FOODEX JAPAN2017)」において、梅干しではなく、「梅チーズトリュフ仕立て」「梅チーズトリュフ仕立て(備長)」と「燻し梅ピューレ」という3商品で勝負に出たのである。前2者は酒のアテであり、後者は万能調味料である。
思惑は当たり、実に500社を超える内外の企業からオファーが殺到したという。“梅と言えば梅干しか梅酒”という固定観念を打破し、国内外の業界関係者たちに、南高梅の活用法に対する無限の可能性の広がりを確信させたのである。
今回は、この3商品を開発した鈴木氏と勝僖梅の波乱万丈の歩みを見てみたい。
(前回の記事)「一口で梅干しを吐き捨てる欧米人、どう食べさせる?」