先人の知慧と現代の感性を“和える”

 矢島氏は、学生時代から日本の伝統(産業)や文化に魅了され、全国各地の工房などを巡る中で、その魅力を次世代につなぐ仕事をしたいと思うようになったという。そして、慶應義塾大学在学中の2011年に創業。社名の「和える」は、「日本の伝統や先人の知慧」と「今を生きる人々の感性や感覚」を“和える”ことを意味している。

 彼女は言う。「“和える”は、『双方の形を残しながら本質を引き出し合うことで、より魅力的なものを生み出す』という点で、“混ぜる”とは異なります。“混ぜる”は元の魅力は残らずにまったく別のものになるイメージです」

 換言するならば、特定の伝統産業において、変えてはいけない「不変」の対象と、時代の変化に即して変えるべき「革新」の対象を的確に識別した上で、変えるべき点は大胆に変革して現代の価値観・ライフスタイルに適合したものとして製品化するということだ。

 彼女の事業は多岐にわたるが、核をなしているのは、“0から6歳の伝統ブランドaeru”である。日本の伝統産業の職人さんたちの技術を用いて、幼少期から大人になるまで使える日用品を企画・開発・販売している。出産祝いや誕生日祝いなど贈り物を通じて、赤ちゃんや子どもたちが日本の伝統に触れ、その家族も伝統産業について知る機会が得られるような品々である。

「伝統産業×子ども」~意表を突く発想でヒット

 さて、「伝統産業×子ども」という意表を衝く発想で生み出された商品群は、発売されるやセンセーションを巻き起こした。たとえば2012年9月に発売した『愛媛県から 砥部焼(とべやき)のこぼしにくい器』などは、数カ月待たないと入手できない状態がしばらく続いた。他の商品もほぼ同様の状況だった。

大ヒット商品となった「愛媛県から 砥部焼の こぼしにくい器」
「こぼしにくい器」の使用イメージ