アメリカでは社内でビジネスの種を見つけ、ある程度将来の見通しがたったら独立し、起業するというスタイルが定着している。それが1990年代以降、アメリカの経済に活力をもたらした。

 一方、出て行かれる側の企業は損をするかというと、そうではない。転出してポストが空けば残った社員にチャンスが広がるので社内に活力が生まれるし、野心と実力を備えた人材がわれもわれもと入ってくる。つまり、自発的に行動すれば社員自身はもちろん、会社も、社会も「トク」をするシステムになっているわけである。

 日本でも、リクルートは以前から40歳くらいまでにスピンアウトして独立・起業する人が多いことで知られている。そのため、よい意味で「日本人離れ」した行動派が多いし、意欲的な人材が入ってきて会社が活性化されるという好循環が形成されている。かつての脱サラブーム、ベンチャーブームのころには、ほかにもこのような会社が少なくなかった。

「自走社員」や「自立型社員」は育てるものではなく、育つものだという原点を忘れないようにしたい。